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ページ9

黒 side


『……凄いですね、京本さんは。明るいし、ポジティブだし。俺とは全然、ちがう…』



『俺なんて、与えられたものから逃げてばかりで、ダメダメだから…』



なんで俺、今日出会ったばかりの人にこんなこと話しているんだろう。



京本さんが身にまとうオーラに当てられて、おかしくなってしまったのだろうか。




しかし、隣に座っていた彼はごくりとカフェオレを飲み干して、ぐいっと俺に体を近づけた。




「そんなはずないです!松村さんはダメなんかじゃない。」



『…いいですよ、べつに励ましてもらわなくても』



「ううん。だって、松村さんは困っている俺に手を差し伸べてくれた。」



「もう、無理かもって。やっぱり普通の世界じゃ無理かもって思った時に助けられた時の嬉しい気持ち、分かりますか?」



「松村さんは、ダメなんかじゃない。とってもとっても素敵な人です!」



「…だから、そんな悲しい顔しないで。」



隣から伸びてきた手が宙を彷徨ってから、俺の頬にぴとりと触れる。



彼をとりまく温かな温度が手のひらから俺に流れ込む。




「……笑って。」



頬を撫でられたかと思えば、次の瞬間にはきゅっと頬肉をつままれて。



何も写さない筈の彼の目に俺が反射していた。



怖かった言葉が、たった今俺を突き動かした。彼からもらった言葉には、刃は含まれていなかった。



『……京本さん、俺、』




弱かった自分と、つかえた気持ちと、逃げてきた故郷と、




向き合ってみることにします。






fin





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作者名:ばにら | 作成日時:2021年10月21日 11時

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