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黒 side
双子であればそりゃあ、比較されるのはよくある話。
でも、俺たち双子は片方が病気という側面が加わって更に拗れた。
大我の体に幼いときに見つかった不整脈。
度重なる通院とか検査とかそんな所で親を独り占めできる大我に対する俺の嫉妬と、
健康体で学校に不自由無く通える俺に対する大我の嫉妬は思春期を境に複雑に絡み合ってしまった。
お互いに距離をとって、相手の地雷は踏まないようにして。
そうしていれば、双子として比較される事も徐々に減っていったから。
そんな風にしていたら、生まれた時は1番近くにいた俺たちはいつのまにか対極にいた。
17になった今でも、大我との間に殆ど会話はない。
反抗期が落ち着いて、冷静になってからは馬鹿だったな、なんて思う反面今更どうもできないよな、なんて気持ちもある。
それに俺はよくても、大我の体はまだ良くなるどころか…。
スマホの点滅するカーソルを見つめたままぼんやりと物思いに沈んでいた。
「北斗ー!!」
そんな意識を浮上させたのは樹の声。
「バスタオルとビニール持ってきて!大我が吐いた!」
考えるよりも先に体は動き出していた。
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作者名:ばにら | 作成日時:2021年10月21日 11時