◎ モールス [桃] ページ28
黒桃が双子、青は2人の兄
黒 side
兄が慌てて家を飛び出してから、30分程。
細身の兄に半ば抱えられるようにして帰ってきた大我は酷く顔色が悪かった。
樹が支えていなければ今にも崩れ落ちてしまうだろう。
そのまま大我は樹に支えられたまま寝室へと消えていった。
俺はおかえりの一言も言うことができずに、1人でリビングのソファに戻ってスマホを見ているふりをした。
「……大我、どうしたの。」
キッチンでタオルを湿らせている樹。その行為で何となくは想像がついたけれど、あんなに弱りきった大我を見るのは久しぶりだったから。
思わず聞いてしまった。
「心配なら見に行ってやればいいのに。」
俺の心を知ってか知らずか、樹はわざとニヤリと笑って水道の水を止めた。
「…別に、そんなんじゃねぇし」
「ほんと可愛くない奴。まぁ少し疲れが出たんかな。徐脈がでてる。あと微熱。」
「そう。」
濡れタオルを持ってまた大我の部屋へと歩いて行った樹。
俺はスマホの検索画面で、徐脈と打ち込んで…
すぐに消した。
大我の事を知るには未だに少し勇気が要る。
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作者名:ばにら | 作成日時:2021年10月21日 11時