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黒 side
「おせーよ。3分遅刻。」
『ごめん、じゅり。』
「別に怒ってねぇし。早く行くぞ。」
ドアの前で待っててくれたのは、樹。
中2で同じクラスになってから、もう2年目のお付き合い。いつからか2人で登下校するのが日課になっていた。
樹は俺の病気を知っても普通に接してくれる唯一の友達。
「なあなあ今日の数学の課題やった?」
『…やったけど。』
「さすが北斗じゃん、見せてよ。」
『またやってきてないの?やだよ毎回。』
「3分待たせたのどこのどいつだよ。借り1だろ。」
『ほんと樹って都合いいよね。』
「んじゃ、荷物持ってやるオプション付きな。これでどう?チャラ?」
俺の背からリュックが強引に奪い取られる。樹は俺のリュックを前に背負って歩き始めた。
「………そこ段差、こけんなよ。」
もしかして、俺が足引きずってるの気がついて…。
樹はいつも、さりげなく俺を助けてくれる。
手は貸してくれるけど、それを俺が気にしすぎないような口調で、サラッと。
今も、話の流れで上手く俺の荷物を持ってくれたんだと思う。歩くペースもいつもよりかちょっとゆっくりにしてくれてる。
『…ありがと、じゅり』
「んだよ急に、きもちわり笑」
この距離感が、俺を普通の世界に居させてくれる。
樹には感謝しても仕切れないな。
……こんなこと、本人には絶対言えないけど。
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作者名:ばにら | 作成日時:2021年10月21日 11時