好きと気付いたバレー馬鹿【木兎光太郎】 (ページ37)

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37、合宿②① ページ37

「……はっや」

思わずAは声を漏らす。それは他の女バレも同様だ。

「日向、影山ナイスぅ～！」

田中と西谷が二人に勢い良く突進して行く。

「これがあの変人速攻……」

「流石に想像以上だったねー」

岬と砂上は動揺を隠せない様子だが、それと同時に感動していた。

「あいつのクセに」

「素直に認めれば？」

加えて下唇を噛みながら日和は日向を睨む。呆れ顔で伊織が口を挟むも、日和の耳には届いていない様だ。

「凄い精密なトスね。見惚れたわ」

「っ、！あ、あざすっ！」

ネット越しから憧れの岬に直接褒められ、影山は緊張で何度も舌を噛む。
隣で日向は笑いを堪えていた。

「君も凄いね！木兎先輩みたいなパワーはないけど、すっごいスピード！打点に到達するまで無駄がなくて尊敬する！」

そんな日向の元に、興奮状態のAが駆け寄る。
これ程までに褒められた為、日向は何も言い返せないで固まっている。

「おい、烏野の一年怖がらせてんじゃねーよ」

「別に怖がらせてはないよ！それより凄くない？！WSなら一度はあんなの打ってみたいでしょ？！」

「いや、ウチMBだから打ってみたいとは思わん」

「そこはノってきてよ悠里！」

そこに広川が入って来て、日向は直混乱に陥る。

「取り敢えず凄いよ日向！また見せてね！次は止めるから！」

「それはウチの台詞な。ウチ、MBだから」

「そう言われればそうだね」

ここに来てやっと落ち着きを取り戻したのか、Aはいつもの声のトーンに戻った。
そのまま二人は持ち場に去って行く。
日向はやっと声が出る様になったのか、大きく息を吸った。

「っま、負けませんから！！」

二人はそれを聞くとニタリと笑みを溢し、言い返しはしなかった。