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"早く帰って寝よう"
そう思ったのは分駐所にいた時だけで、結局私は今日も道草を食ってしまった。
分駐所を出てもう1時間は経つだろうか、未だに家は全く見えない。
電車で帰れば40分程度の距離を2時間もかけて歩く理由は、特にない。
強いて言えば…街の風景を目に焼き付けるためだろう。
例えば、今歩いている歩道橋から見える景色。
たくさんのヘッドライトが往来していて眩しくて好き。
ここを曲がったらラブホがあって奥にはファストフード店。
大人のためにある場所と、老若男女行ける場所が同じ立地にあるところが滑稽だと思う。
さらに奥に行って左に曲がれば、シャッター街。
閑散としていて街灯も薄暗い。
そして行き止まり。
普通なら引き返すところ、私はその塀を超えてまた違う道に出る。
行かなくてもわかる。現にまだ私はラブホを通り過ぎていない。
左に曲がればあれがあって、
右に曲がればアレがある。
全部頭の中に映っている。
なぜわかるか、そう問われれば私は決まってこう答える。
「ここは私のテリトリーだから。」
頭の中で地図が描けるほどには熟知している。
地理が好きなわけではないし、覚えたくて覚えているわけではない。
一度通った道はなぜか頭にインプットされて嫌でも覚えてしまうのだ。
だからといって、結局歩く理由は見当たらない。
今日は志摩さんにたくさん怒られたから感傷に浸りたくなった。
そういうことにしておこう。
無理やり結論付けて私は今日も人気のない道を通り、のんきに鼻歌を歌いながら帰路についた。
〜第1章 完〜
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作者名:古町小町 | 作成日時:2020年10月12日 0時