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「いないの?」
「いません。」
「ほんとに?」
「ほんとに」
「最後の人はいつ?」
「…1年前くらいに別れて、それっきりです。」
「えー!なんで!!!」と耳を塞いでも聞こえてくる声をどうにかして躱していると、
「お疲れー!」「お疲れ様です」
救世主が現れて陣馬さんの後ろに隠れる。もう面倒に巻き込まれたくない。
「どうした嬢ちゃん」
「いえ、そのままでいてください。あ、お疲れ様です。遅かったですね。3機捜のヘルプでしたっけ?」
これでもか、というほどに早口でしゃべる。私の様子を怪訝に思いながらも話に乗ってくれた。
西武蔵野市で重点密行を行っている最中、110番通報を受けたらしい。でもその通報者は見つからず、
「いたずら通報でした」
「“いたずら通報”?」
「ああ。
最近西武蔵野管内で頻発してるんだと」
すると、九重さんがタブレットを志摩さんに渡した。私も覗き込んで見てみると、そこにはゲームの画面が映し出されていた。
「ハイパーゲームというらしいです。
出生はナウチューブだと言う説もありますが、そちらは削除されて、代わりにそんなゲームがネットに。プレイヤーが110番通報してゲームがスタート。パトカーが来たら逃げる、追跡から逃げ切ったら勝ち」
すると話を聞いてるのか聞いてないのか、伊吹さんはタブレットを奪ってゲームで遊び始めた。
「これをな、本物の警察相手に実際やってやがるんだ!
スリルを楽しむんだと」
「暇な奴らだな」
「いい迷惑ですね」
「俺よりバカ。
…ん?どうしたのAちゃん」
伊吹さん、自覚あったんですね。
という言葉を呑み込んで「いえ、何も」とまた陣馬さんに顔を向けた。
「通報は毎回公衆電話。いたずらだろうが、こっちは確認しないわけにはいかんからな」
「で、そいつ足速いの?」
「これまでの警察官はみんな逃げ切られています。」
伊吹さんは満足そうに口角を上げた。
いたずらと言えども虚偽通報は罪に問われる。偽計業務妨害罪だ。
なのになんでそんなに嬉しそうなのか。
ひとつため息を溢すと、伊吹さんの顔を見た。
「良いのか悪いのか分かりませんが…
緊急さえなければ次は、404が3機捜のヘルプですよ。」
すると今度は目が三日月になるほどの笑顔を見せる。犯人逮捕よりも走ることに喜びを感じてるのかもしれない。
どうしたらいいか聞こうと、志摩さんを見ると首を振っている。
…放って置くことにした。
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作者名:古町小町 | 作成日時:2020年10月12日 0時