のんきな猫と死にたがり (ページ24)

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「いや、済まないんだよ。俺には分かる。
　刑事になっても職務質問を受ける俺には分かる」

「そんなこと言われても…」

自慢げに聞こえるが、それは全く自慢できるものではない。
でも伊吹さんの身なりだと少々ガラが悪いし疑いたくなる警察の気持ちはわからなくもない。

「大抵の犯人はやってないって言うんだ、やってても」
「中にはやってない奴だっているだろ？」
「いないとは言わないけどさ」
「志摩ちゃんさ、少しは人を信じてみなよ」

いつもの能天気さで笑いながらそう言われる。志摩さんは少し頭を抱えた。
伊吹さんのそういうところは長所でもあって短所でもあると思う。
人として真っすぐで良い人なのは伝わるけど、それが警察に向いているかと言われたら違う。

「馬鹿か！って馬鹿なのは知ってたわ」
「知ってたなら聞くな」
「違う。人間の野生の馬鹿なのは知ってた。刑事としても馬鹿なのか」
「それほぼ意地悪な」

「1つ言わせてもらしてもらう。」
「出た」

最近口癖のような志摩さんの台詞に伊吹さんは苦そうな顔をした。

「俺たちの仕事は疑う事だ」

「それ誰が決めたんだよ」
「は？」
「加々見の事信じてやる刑事が1人くらいいたっていいじゃんか」

全く共感できない。でも伊吹さんのその言葉にはウソ偽りが見えなかった。
いつもの私なら呆れてるけど、その時はなぜか心にスッと降りた。

「…

　駄目だろ。」
「えっダメ？」
「ダメだろ。じゃあ誰が犯人なんだよ」
「岸？」
「証拠は？」
「んー？じゃあ第一発見者？」
「じゃあ、じゃねぇわ、
　冤罪作ったらどうすんだよ」
「そういうとこは志摩ちゃんが！
　細かいこと気にすんなよー」

「お前は頭がゆるふわなんだよまじでもう！」

志摩さんがうなだれる。
他人任せで勘が頼りの伊吹さんの言い分は、年下の私でも心の底から「ばかじゃないの！？」と思うけど、なぜか憎めなかった。

「まぁでもさ、俺は信じてあげたいんだよねー！」

伊吹さんはふわっと笑った。

疑うことが仕事と教えられてきたからこそ、信じることは難しい。それができてしまう伊吹さんはなんてカッコいいのだろう。
私は思わず笑ってしまった。前から視線を感じるけどツボに入ったせいで中々収まらない。

「あー…伊吹さんって本当に面白いですね！」
「お！それは褒めてる？」

「…褒めてますね」
「やっぱAちゃんは見る目あるね」

「おい、お前まで伊吹を甘やかすなよ」

「はーい」

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