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容疑者を乗せた車の検問が終わる。人質を脅して難を逃れたのだろう。
警官が近寄ってきたため私も警察手帳を用意する。
「前の車、容疑者乗ってたよ」
「え?」
唐突にそれ言う!?
と、突っ込みそうになったが冷静さを取り戻して手帳を見せる。
「すみません機捜です。ちょっと急いでて」
「あの後部座席の黄緑の男」
「いえ、息子さんでした。話も具体的で」
検問の警察官から話を聞くと、体調の悪い息子を病院に連れて行く途中らしい。
息子の名前はタナベヒデノリ、今年で28歳になる、らしい。
「そうでしたか、ありがとうございます」
「いえ、ご苦労様です」
検問を終えて窓を閉める。それでも疑いが晴れない伊吹さんは口を尖らせたままだった。
「俺はそれでも犯人だと思うんだけどな」
「だから行くぞ。早く出せ、見失う」
志摩さんの返答が意外だったのか、伊吹さんは嬉しそうに「いいね!」と言って車を走らせた。
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「東京出ちゃうな」
「えっ、越えたら駄目なの?」
品川区から逃走車両を追い続けているが、目的地は見当つかない。
前の方には神奈川県川崎市という看板が見えてきた。
「機捜404から1機捜本部、
国道15号で神奈川に入る。捜査共助課への報告と通信上本部への公益通信リンク入れを願いたい」
1機捜へ連絡をして許可を貰い、県境を超える。
「俺の事信じてくれるわけ?容疑者が乗ってるって話」
「あ、信じてない」
「何だよ!」
「さっきの警官も信じてない。可能性がゼロになるまで確認はする」
「他人も自分も信じないだっけ?」
含みのある言い方に私は志摩さんを見やる。
"自分"すら信じないのはどうしてだろう。それは相棒殺しと呼ばれることに関係しているのか…
一度開けた口を閉じて、私は窓の外を見た。
「俺さ、昔からめっちゃ職務質問されんだよね」
「だろうな」
「学生のときも学校で備品がなくなったって言やぁ教師が伊吹じゃねえかっていっつも俺が疑われてさ。もう言い訳すんのも嫌になって。
信じてくれなくていいや、だったら俺も誰も信じない。
でもさ、いたんだ。たった1人だけ信じてくれた人がさ。
志摩ちゃんもAちゃんも、俺の事信じてくれていいんだぜ!」
「「結構です」」
「何だよ!」
すると、志摩さんのスマホが鳴る。相手は陣馬さんのようだ。
『田辺夫妻には確かに息子がいた。
名前は田辺秀則、だけどもう死んでる。高1のときに自 殺した。12年前の今日だ』
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作者名:古町小町 | 作成日時:2020年10月12日 0時