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「今どこだ、伊吹!」
『神谷町8の4、容疑車両は芝浦方面!』
すごい、この短時間でもうそんな所に。
陸上選手並みに足が速いのではないだろうか。
『志摩!』
「何だ」
『秘密の近道教えろ!』
「ねえよー」
『はぁ!?
お前使えねぇなほんとに』
「伊吹さん!!犯人は芝浦方面に向かう中で大通りをどちらに曲がりましたか!?」
『東側!!』
「なら橋を渡り切って3つ目の建物の間を右に抜けたら左に曲がってください!近道です!!」
『おっけ!!!』
声を荒げながら走ると大分体力がキツい。息が上がる。
「近道あんのかよ」
「人、1人分ぐらいの通りなので、本当は通れませんが
…伊吹さんくらいなら、通れる道です」
その後伊吹さんは犯人の居場所が分かったらしく無線で場所を伝えられる。
言われた場所に志摩さんと向かうと、倉庫街に到着した。全ての中を確認するのは困難だと思っていたが、近くの建物からカランカランと物音がして様子を窺いながら入る。
「行くぞ」
「はい」
物音を立てないように慎重に歩みを進む。
奥の方で男の話し声が聞こえた。伊吹さんの声だ。
聞こえた方向に2人で静かに駆け寄ると、犯人の頭に何かを当てている伊吹さんの姿があった。
…拳銃を突きつけているのだろうか。
「もー志摩ちゃん遅いよ、こいつ撃っちゃってもいいよね?」
「…銃を下ろせ。相手は降伏してる」
志摩さんの言う通り、犯人は両手を上げて怯えながら「許してください」を連呼している。
このまま撃ってしまえば始末書どころでは済まない。
「轢かれた、殺されかけた…正当防衛だよ?」
「発砲の要件に適ってない」
「規則なんてどーでも良くない?
誰も見てない、防犯カメラもない。
ここにいんのは俺と志摩ちゃんとAちゃんと、このくそ野郎だけ」
伊吹さんの声が普段の調子と違って低くて怖い。
そして、初めて見る光景のはずなのに、なぜか既視感を覚えてしまった。
私は止めもせず、その場にただ立ち尽くす。
「お前みたいな奴が生きてると皆不幸になるんだよ、
許せるはずがねぇだろうがよ。
死んだら終わり、死人に口なしだ」
「やめろ」
「バイバイ」
「やめろ!!」
制止を聞かずに撃つ動作に入った伊吹さんに向かって、隣にいた志摩さんが飛び出した。
私は今から目の前で繰り広げられるであろう事から背けたくて目を瞑ってしまった。
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作者名:古町小町 | 作成日時:2020年10月12日 0時