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壁にかかっている時計をちらっと見る。
短い針は12と1の間を指していた。長いこと机の前で立ちっぱなしなのに解放してくれる様子は見えない。いったいいつまで続くのか「よそ見をするな!!!」

あ、ばれた。顔ではなく黒目だけ動かしたつもりなのに。
とりあえず申し訳なさそうな顔を作って「すみません」と言っておく。


「…君は勝手が過ぎるからな、機捜に入れるのだって本当は反対なんだ」

もう聞き飽きたよその言葉。
そんなことより、腹減った。

今日はなぜか早起きできて、勤務初日だし偶にはと思い、芝浦署には前もって8時20分には着いていた。
コンビニで買った朝ごはんを食べようとしたところ桔梗隊長に呼ばれ、マメジ…我孫子刑事部長の命令で警視庁にわざわざ赴いたらこんな時間になってしまった。

だから今日に関して、私は決して悪くない。

強いて言えばあのマメジが、だっらだらと私の皮肉を言い続けるのが悪い。暇なのか疑ってしまうほど。いやもうかんぺきに暇人だ。
マイペースだとか、自分勝手だとか…
私だってもういい大人だ。あんなに言われなくても30年も人として過ごしていれば、周囲の和を乱してはいけないことは十分承知している。
そう、頭では理解している。行動に示さないだけで。


「検挙率がトップだろうがなんだろうが、くれぐれも勝手な行動はしないように」

「はい。肝に銘じます」


やっと話の終わりを迎えて警視庁を後にする。
初日にこんな長話を聞かされる羽目になるとは思いもしなかった。早起きなんて滅多にするもんではないと実感した。次はぎりぎりまで寝ていよう。










芝浦署に戻って、桔梗隊長に指示された部屋を目指す。
廊下ですれ違う人たちに挨拶を済ませて1機捜の分駐所に入ると、
“第4機捜(仮)”
と、手書きの紙が貼られた会議室を見つけた。
これが分駐所か、見えない、雑だな、
なんて思いながら近づくといい匂いが私の鼻をくすぐった。ああ、お腹が鳴りそう。


「失礼しまーす…」


ゆっくり中に進む。
会議室を見渡すと男の人が4人いて、みんな見た目からして個性がバラバラ。隊長から聞いた話だけでも見分けは付きそうだ。
スーツをかっちり着こなしてる若いイケメン君が九重刑事局長の息子で、パーカーの人が奥多摩の刑事、
エプロンをつけている人が4機捜の班長で、パーマの人が…元捜一の"相棒殺し"だろう。



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作者名:古町小町 | 作成日時:2020年10月12日 0時

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