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hk.
高地や京本は明日も朝から仕事だというので、
今日はこれでお開きとなった。
「また集まれそうなら集まろうな」
「今度は夜通し飲み会も良いかもね」
「じゃ、またすぐ〜」
「うん、みんなも気をつけて帰ってね」
「ばいばーい!」
三人を見送ってから、ジェシーと食器やらなんやらを片付ける。
「なんか久々にみんな揃えて良かったね」
「ほくちゃんすごい楽しそうだったもんね〜?」
「…うん、楽しかった。
またすぐ遊べるといいんだけどね」
なんて話していると、ソファの下にふと光るものを見つけた。
近づいて拾ってみると、シルバーの指輪だった。
なぜか懐かしい感じがしたが、生憎まったく心当たりが無い。
「ねえジェシー、これ誰か忘れてったのかな?」
「え、どれ?」
そう言うジェシーの元へ行き、ソレを見せると
ジェシーの瞳が揺らいだ、気がした。
「……ジェシー?」
「えっ、あ、あぁ、本当だね。
誰か忘れてっちゃったのかな…
俺が聞いとくよ、それ預かっといて良い?」
「?うん、ありがとう
じゃあよろしくね?」
「……うん」
なんだかいつもと違うジェシーに違和感を覚えたが、
あまり深くは気にしなかった。
彼がどんな表情であの指輪を見つめていたのか、
今となってはもう分からない。
.
「じゃあ、おやすみ」
「おやすみジェシー」
ちゅっ、と口づけをされ、眠りにつく。
今日は久々にみんな集まってテンションが上がっていたからか、ジェシーはすぐ眠りについた。
そんな彼を横目に、俺はやっぱりあの指輪が気になってしまい、トイレに行くのを装いつつ、こっそりとソレを持ち出した。
何の変哲もない、どこにでもありそうなシルバーリング。
強いて言うなら、俺が好きなデザインだな、というくらい。
他になにか特別なものがあるようには思えなかったが、
なにか、
何かが胸に引っかかる。
ふと、指輪の内側になにやら文字が彫られているのに気がついた。
目を凝らして見てみると、そこには、
"11.03 S&H"
と刻まれていた。
「S&H、って……
それに、この日付は、」
.
大学の文化祭の日、
慎太郎と結ばれた記念日だ。
それに気づいた途端、涙が頬を伝い、
俺は意識を失った。
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作者名:鈴森。 | 作成日時:2020年10月30日 1時