dryflower 〜 sho.hirano 〜

10 ページ10

.









廉『ありがとうな』







そのまま前を向いたと思ったら
すぐに振り返り熱を帯びた視線をいっぱいに浴びる







廉『Aちゃんもな』







「え？」







廉『何かあったら言うんやで
ほら、彼氏には言えやんこともあるやろうし』







廉『そんときはさ、力なるから』







優しい顔で笑った後ろにはもう駅が見える






大好きな彼氏、優しくて心強い先輩






私の周りには素敵な人がたくさんいて、






私のことを思ってくれる人がたくさんいて、






幸せだなと改めて噛み締める






廉『気を付けて帰るんやで』






「ありがとうございました」






廉『じゃあな』






柄になく私の頭にポンって手を置いてから
ポケットに手を突っ込んで来た道を引き返す






帰り道駅の前通るから、なんて嘘じゃん








.








スラッと伸びた細すぎる脚と
びっくりするぐらい小さな顔





人より少し明るい髪色が魅了して仕方ない





すれ違う人々がこれでもかってぐらいに彼に夢中で




フワッと香るしつこくないサッパリした匂いが
彼のすべてを物語るようで。




それでいて自分のテリトリーには
なかなか入らせようとしないところが
また女心を擽る




一体今までどれぐらいの女の人を
彼の沼へ引きずり込んできたのか。







.







心地良いリズムの電車に揺られながら
なんとなくそんなことを考えていた。







.

11→←9

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す