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「誰?」
ユウは立ち止まり、あたりを見渡すと、ユウに合わせるように先ほどの声もぴたりと止んだ。
「気のせい…じゃないよね」
気のせいだと思いたかったが、確かに何者かの声が自分の鼓膜を振動させた。
明らかにローリーやセレアの声ではない、別のナニカ。
頬から下へと冷や汗が伝う。
逃げるな、逃げるな、と一生懸命自分に言い聞かせる。
そして再びユウは廊下を歩き始めた。
すると先ほどの声が再び木霊した。
「遘√?謔ェ縺上↑縺??縺ォ窶ヲ縺ゥ縺?@縺ヲ隱ー繧ゆソ。縺倥※縺上l縺ェ縺??窶ヲ」
長い廊下にノイズ音のような声と共に重いものを引きずる音が響く。
それは止まることなくどんどんこちらに近づいてきている。
よく目を凝らしてみる。
ユウがいる位置の少し先にある僅かな光が差し込む空間を黒い影が通り過ぎた。
「っぇ…」
思わず声が漏れてしまった。
綺麗なゴシックドレスを着ている、頭部のない少女がそこにいたのだ。
しかもそれだけではない。少女は赤黒いオーラのようなものを纏っている。
ズズズッ…ズリズリズリッ…
その人間は足を引きずりながらふらふらとこちらに近づいてくる。
「窶ヲ莠コ髢凪?ヲ?鬆ュ窶ヲ?」
相変わらず何を言っているのかちっとも聞き取れない。
ユウはその者から目を離さないように一歩一歩後ずさっていく。
どうしようもなく怖い。
頭のない人間がこのように歩くことができるなんてありえないからだ。
しかしここで逃げたら弟を見つけられない。
ユウはそれ一心で恐怖に立ち向かっていた。
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作者名:あまちゃん | 作成日時:2023年4月9日 22時