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ユウの後ろから声が木霊する。
がさがさと草木をかき分け、懐中電灯を照らしながらユウの後ろから姿を現したのは一人の男だった。
赤いチョーカーを身に着け、頭には黒いターバンを巻いている。
「ったく、手のかかるちびっこだな…」
「ランス、おにーちゃん」
「うおっ、…ユウ、お前先に行ったんじゃなかったのかよ」
この日は町内会の夏祭りの日で、両親の代わりに近所に住むランスという男についてきてもらっていた。
花火や屋台を見て、夏祭りから帰る途中、人込みに飲まれ、ヘンテコな道へと放り出されてしまったのだ。
ランスの声と顔を認識したとたん、ユウの何かがぷつんと切れ、その場にへたり込んでしまった。
「おいおい大丈夫…ではなさそうだな」
ランスがユウの顔を覗き込む。
今のユウの顔は涙でぐちゃぐちゃだった。
「だ、だって…あれ…」
ユウは白い浮遊物を指さす。
「…あー、あれはオーブってやつだな」
「別に俺らに危害を加えてくるようなやつじゃねえ、だから安心しろ」
ランスの声はユウにとって、どこか安心感を与えてくれる。それは彼と付き合いが長いせいかもしれない。
「ほら、そんなことよりおまえの弟があっちで待ってるぞ」
そう言われ、よく耳を澄ますと遠くの方で聞こえるイリアの声。
ユウはそれ以来、オーブを見ても怖がることはなくなった。
・
「…ランスお兄ちゃん」
彼はユウが十二歳のとき、突如として行方不明となってしまった。
三年がたった今も捜索は何一つとして進んでいないらしい。
「どこに行っちゃったんだろう…」
ユウは建物の中を歩きながらぽろりとそんな言葉を口にしたのだった。
そのとき、
「逞帙>窶ヲ繧、繧ソ繧、繧医♂窶ヲ」
何かの声が聞こえた。
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作者名:あまちゃん | 作成日時:2023年4月9日 22時