７話 ページ8
冬「Aーお風呂上がったー？」
奥の部屋から、姉さんの声。
『…上がったよ。次入っていいよ。』
冬「分かった。ありがとー」
焦凍の方を向くと、私のほうをみて固まっていた。
『……焦凍？』
焦「…………あっ、いや、なんでもない。忘れてくれ」
そうなの？
でもまだ、何か言いたそうな顔してるよ？
『……そっか。分かった。でも、言いたくなったらいつでも言ってね』
焦「…だから忘れろって」
ちょっと寂しい。
無表情で私の前を歩き始める焦凍。
そういえば、さっきよりフラフラしなくなったな。
焦凍が触れてくれたからかな。
廊下を歩く私たちの前に、姉さんが歩いてくるのが見えた。
すれ違いそうになったとき。
冬「……あ、A。またのぼせたでしょ。顔赤いよ。」
ばれちゃった。
『…うん。ごめん』
冬「………まあしょうがないんだけどね。お湯に浸かる時間決めとくといいよ。気をつけてね」
『うん。ありがとう』
そのまま姉さんは風呂場に向かった。
焦「……その病気、本当大変そうだな」
『まあもう慣れてるけどね』
焦凍は、この病気を心配してくれるときと、憎むときがある。
普段はこうやって優しくしてくれるけど、ケンカのときはすごく怒ってくる。
まるで、個性を半分ずつしか使わない私たちを怒る、お父さんのように。
私と焦凍はキッチンに行ってコップに水を汲み、ゆっくり飲んだ。
『……ふぅ』
この水も、温度が分からない。
感覚としては、ただの液体を口に流し込んでる感じ。
焦「…ストレッチするか」
『いいよ。焦凍先どうぞ。私が押すよ』
焦「……ああ」
焦凍は畳の上に足を広げて座り、その背中を私がゆっくりと倒した。
『きつかったら言ってね』
焦「………ああっ」
焦凍は体が柔らかい。
『…………』
どこまで押したらいいのかわからない。
私は痛みを感じないから、限度ってものが分からないんだ。
だから、教えてくれるまで押し続けてしまう。
焦「……っ」
少し押し続けて、あまり倒れなくなったから、私はそっと手を離した。
焦「ありがとな、A。次いいぞ」
『うん。よろしく』
今度は私が畳に座った。
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作者名：派閥弁当 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/my.php
作成日時：2018年6月11日 1時
