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「あまり聞いてて楽しい話では無かろう。それでも良いのじゃな?」
『……はい』
部屋には、どことなく緊張した雰囲気が漂う。
学園長先生は少しだけお茶に口をつけてから、まるで懐古するように、ぽつりぽつりと語り出した。
「かつて……といっても、そこまで昔では無いが……お主と同じように、一人の女が裏山に落ちてきた。光と共に現れ、未来を知る彼女を、ワシらは"天女様"と呼んだ」
『私と同じように……?』
私は、思わず首を傾げる。
未来を知るということは、その人も室町では無い時代からやってきたはずだけど……
その人が天女様なら、どうして私まで天女と呼ばれるのだろうか。
学園長先生は私の問いに何も言わず、ただ静かに頷く。
そして、言葉を続けた。
「それがまあ、大層美しい女でのう。帰り方も分からず行く場所も無いというから、彼女を学園で保護することとなったのじゃ」
ここまでは、普通の良い話。
けれど_
学園長先生の表情が、その時確かに曇ったのを私は見逃さなかった。
「天女様は気立も良ければ一生懸命に働くし、たちまち学園の皆から慕われるようになったのじゃが……やがて、そんな天女様を恋い慕う者が突然増えた。突然じゃ」
"突然"という言葉をなんども強調する学園長先生。
私はすっかり話に聞き入ってしまって、ただ固唾を呑み込んで言葉の続きを待つ。
「彼らは盲目的に彼女を愛す。上級生の殆どが天女様の虜となり……更には、上級生同士で争い、下級生まで巻き込むようになってしまったのじゃ」
『えっ……』
上級生、下級生というのは、忍術学園の話をされた際になんとなく聞いていた。
現代の学校と同じように先輩と後輩、という関係がある事に驚いたけど……
まさかその全員が、一人の女性の為に争うなんて、そんな……
『それで、どうなったんですか?』
「当然学園はめちゃくちゃ、上級生と下級生は隔離になったのじゃが……その後すぐに、自分のせいだと心を痛めて痩せ細った天女様はやがて熱病を患い、亡くなってしまった。」
『……』
思わず、私は絶句してしまった。
……悲しすぎる。
平穏な日々を失った学園の人たちも、ただ心を痛めるしかなかった天女様も。
天女様……元の世界に帰れず苦しんで、どんな気持ちだったんだろう。
「結局、元に戻った上級生も下級生との溝は埋まらず、原因も分からず終い……
しかし、この話はここで終わらなかったのじゃ」
『……え?』
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海鈴(プロフ) - 麗羅さん» わぁあありがとうございます!性格についてはかなり考えたので、そう言って頂けて嬉しいです。頑張ります! (2022年1月28日 18時) (レス) id: 7471f44b15 (このIDを非表示/違反報告)
麗羅(プロフ) - コメント失礼します!すごく面白いです!夢主ちゃんが剣道が得意で明るい性格っていうのがすごく好きです!更新楽しみにしています! (2022年1月27日 22時) (レス) @page2 id: 90634de060 (このIDを非表示/違反報告)
海鈴(プロフ) - みこちさん» ありがとうございます! (2022年1月14日 22時) (レス) id: 7471f44b15 (このIDを非表示/違反報告)
みこち(プロフ) - 海鈴さん» もしも、この作品にゲストが出るとしたら、雑渡さんか兵庫水軍の皆さんが現れてくださったら…なんて考えてしまいます。応援します! (2022年1月13日 12時) (レス) id: e0b3c2b120 (このIDを非表示/違反報告)
みこち(プロフ) - 海鈴さん» 後も一つ、犬夜叉と鬼狩りという奴も在りますよ。出来ますれば、コメントを頂けたら嬉しいです。どんなコメントでも大歓迎です。 (2022年1月11日 21時) (レス) id: e0b3c2b120 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海鈴 | 作成日時:2022年1月9日 22時