43 ページ45
Aside
……目の前には、急斜面の崖。
『……!』
呆然としている暇も無く、落ちそうになっている子どもの手を咄嗟に掴む。
『しっかり掴んで!』
「……、……!」
その子は明らかに私に何かを伝えようとしているが、ぼんやりしている世界の中、声は全く聞こえない。
それでも、私は精一杯の力で引き上げて_
『大丈夫、必ず助けるから!』
だから、負けないで
あきらめないで……
『……はっ!!っ、いて』
勢いよく飛び起きれば、背中に鈍痛が走る。
きょろきょろと部屋を見回して、私は小さく息をついた。
『なんだ、夢か……びっくりした』
……なんだか、不思議な夢を見た。
それは夢なのに、まだ鮮明に脳裏に残っている。
『今、何時だろ……』
どうやら、私はかなりの時間眠ってしまっていたらしい。
もう授業が終わって放課後なのだろう、外からは生徒の声がちらほら聞こえた。
『結局、全然進まなかった』
次は寝ないようにしないと。
そんなことを考えながら、寝起きでだるい身体を起こして、とりあえず机の上を片付ける。
紙をまとめ、本を机の端に寄せたところで、硯に残っていた墨が乾いてカチカチになっていることに気づいた。
私は思わず口を手で抑えて、声を上げる。
『あーー!やらかした!!』
放っておけばこうなる事は分かっていた筈なのに……!
恐る恐る指で触れてみるけどやはり固まっていて、私は頭を抱えた。
『どうしようこれ、洗えばなんとかなるのかな』
……ていうか、なんとかするしかない。
もう一度髪を結び直し、硯と筆を持って部屋を出る。
もしも何かあった時のために、しっかりと竹刀も背負った。
.
.
.
私の部屋から井戸への道を進む途中では、忍術学園の門の前を通る。
すれ違う生徒の視線を感じながら歩いていた私は、ふと、その門の前で立ち止まった。
木で出来ているであろうその門は鍵がしっかりとかけられていて、なんだか重い印象を受ける。
『外って、どんな感じなんだろうな』
ここに来てから、まだ一度も忍術学園の外に出ていない。
学園長先生には、自分の命を守る為にも外には決して出るなと言われた。
もちろんそれに逆らう気は無いけれど、でも……
やっぱり、興味はある。
『……って、それより筆を洗わないと!』
ボーッとしている暇は無い。
そう再び歩き出したその時、門の向こうから声が響いた。
「忍術学園は、こっちだー!!」
177人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「忍たま」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
海鈴(プロフ) - 麗羅さん» わぁあありがとうございます!性格についてはかなり考えたので、そう言って頂けて嬉しいです。頑張ります! (2022年1月28日 18時) (レス) id: 7471f44b15 (このIDを非表示/違反報告)
麗羅(プロフ) - コメント失礼します!すごく面白いです!夢主ちゃんが剣道が得意で明るい性格っていうのがすごく好きです!更新楽しみにしています! (2022年1月27日 22時) (レス) @page2 id: 90634de060 (このIDを非表示/違反報告)
海鈴(プロフ) - みこちさん» ありがとうございます! (2022年1月14日 22時) (レス) id: 7471f44b15 (このIDを非表示/違反報告)
みこち(プロフ) - 海鈴さん» もしも、この作品にゲストが出るとしたら、雑渡さんか兵庫水軍の皆さんが現れてくださったら…なんて考えてしまいます。応援します! (2022年1月13日 12時) (レス) id: e0b3c2b120 (このIDを非表示/違反報告)
みこち(プロフ) - 海鈴さん» 後も一つ、犬夜叉と鬼狩りという奴も在りますよ。出来ますれば、コメントを頂けたら嬉しいです。どんなコメントでも大歓迎です。 (2022年1月11日 21時) (レス) id: e0b3c2b120 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:海鈴 | 作成日時:2022年1月9日 22時