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『うわっ!……びっくりした』
「……」
自分よりもかなり背丈のあるその人を見上げれば、なんだか見覚えがあることに気づく。
でも、どこで?
……そうだ、ここに来たとき、伊作さん達と一緒にいた人だ。
装束の色同じだし、六年生なのかな……
って、そんなことを考える前にとりあえずこの状況を説明しなければ。
このままでは、私はただの怪しい人になってしまう。
『あっ、別に本を盗もうとかそういうわけで来たんじゃないんです!ただ、文字の勉強が出来る本を借りようと思って』
「……もそ」
『あ……はい?』
しかし、私の予想に反して、返ってきた言葉は極めてシンプルだった。
ちょっと聞こえづらかったけど、聞き返すのも申し訳ない。
「……」
『……えっと』
「……」
……なんだ、この沈黙。
元々、静かな人なのだろうか。
声は小さくてほぼ聞こえないし、表情は全く変わらない。
「……」
『あ、あの』
彼はじっとこちらを見ているだけで、一言も喋ることはない。
もしかして……無視されているのだろうか。
そんなことを考えているうちに、その人は何も言わずにまた図書室の中に入っていってしまった。
声を掛けてみても返事は返って来なくて、私は小さく息をつく。
『はぁ……またか』
図書室は諦めて、別の方法を探すしかないようだ。
こういう扱いを受けるのは今に始まったことではないし、なんとも思わない。
けれど天女というだけで判断されるのは、やはり腑に落ちなかった。
そもそも、私は天女じゃないんだけど……
『まあ、仕方ないよね』
踵を返し、図書室の前を去ろうと歩き出す。
するとまた図書室の扉が開く音がして、私は振り返った。
「……もそ」
『なんですか?……って、えっ』
突然差し出された三冊の本を目の前に、私は呆然とする。
おそるおそる受け取って開いてみれば、書き崩した文字や、流れるような文字が並んでいて
それは明らかに文字の勉強の本だった。
『これ……文字の本』
……持ってきてくれたんだ。
驚いて顔を上げると、その人はまた小さな声で囁いた。
「返却はお早めに……もそ」
『はっ、はい!ありがとうございます!』
貸してもらった本をしっかり抱え、私は頭を下げる。
その人は小さく頷くと、何も言うこと無く向こう側に去って行った。
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海鈴(プロフ) - 麗羅さん» わぁあありがとうございます!性格についてはかなり考えたので、そう言って頂けて嬉しいです。頑張ります! (2022年1月28日 18時) (レス) id: 7471f44b15 (このIDを非表示/違反報告)
麗羅(プロフ) - コメント失礼します!すごく面白いです!夢主ちゃんが剣道が得意で明るい性格っていうのがすごく好きです!更新楽しみにしています! (2022年1月27日 22時) (レス) @page2 id: 90634de060 (このIDを非表示/違反報告)
海鈴(プロフ) - みこちさん» ありがとうございます! (2022年1月14日 22時) (レス) id: 7471f44b15 (このIDを非表示/違反報告)
みこち(プロフ) - 海鈴さん» もしも、この作品にゲストが出るとしたら、雑渡さんか兵庫水軍の皆さんが現れてくださったら…なんて考えてしまいます。応援します! (2022年1月13日 12時) (レス) id: e0b3c2b120 (このIDを非表示/違反報告)
みこち(プロフ) - 海鈴さん» 後も一つ、犬夜叉と鬼狩りという奴も在りますよ。出来ますれば、コメントを頂けたら嬉しいです。どんなコメントでも大歓迎です。 (2022年1月11日 21時) (レス) id: e0b3c2b120 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海鈴 | 作成日時:2022年1月9日 22時