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Aside
「し、失礼します……」
控えめに保健室の戸が開かれる。
伊作さんに連れられてやってきたのは、私を助けてくれたという三人の一年生だった。
丸い眼鏡の子を真ん中に、そしてその背後に隠れるようにして少しぽっちゃりとした印象を受ける子がいて、黒髪の子はこちらの様子を伺うようにしている。
……やっぱり、私のことは怖いのかな。
そんな考えが頭をよぎるけれど、とりあえず私は身体を起こし、頭を下げた。
『あ、えっと……その、助けてくれて、ありがとうございました』
「えっ、あ、は、はい!天女様!」
まるでロボットのような表情で反応する三人。
そんなに固くならなくても大丈夫だよと伊作さんが三人に声を掛けてくれたけれど、やっぱり緊張してしまうようだった。
ここで会話が途切れてしまうと気まずいので、なんとか話を続けてみる。
『あ、えっと……私重かったよね!?大丈夫だった?』
「そそそそんなこと!」
「ね、しんべえ!」
「う、うん!!とんでもございます!」
……ん?
あれ、今……ん?
「あっ」
『えっ』
想定外の言葉に思わず声を上げると、三人は顔を見合わせて、この世の終わりの様な表情を浮かべた。
そして、耳をすませば微かに聞こえるようなひそひそ声で話し始める。
「……ちょっとしんべえ!それを言うならとんでもございませんでしょ!」
「あ、そっか」
「「そっかじゃない!」」
『……あははっ』
コントみたいで、可愛らしいやりとりだな……
そんなことを考えていたら、私は思わず吹き出してしまった。
一方、三人は驚いた様な表情でお互いを見回し、首を傾げる。
「おっ、怒らないんですか?」
『ないない!こんな事で怒らないよ……三人とも、仲良しなんだね』
_暫しの沈黙。
そして、私に返ってきたのは……三人の笑顔だった。
「「……はい!」」
『!』
……なんだろう、この胸があたたかくなる感じ。
敵意も、疑念も感じない、純粋な笑顔だった。
私は今まで、自分を信じてくれる人が1人でもいれば良い、どうせ帰るんだから、この学園の生徒とは仲良くならなくてもいいと思ってたけど……
『私、月原A。良ければ天女じゃなくて、名前で呼んでもらえるとうれしいな』
「……はい!僕は猪名寺乱太郎です」
「摂津のきり丸、です」
「福富しんべえです!」
この学園の人たちに、そしてこの学園に……もっと、私から歩み寄るのも、いいかもしれない。
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海鈴(プロフ) - 麗羅さん» わぁあありがとうございます!性格についてはかなり考えたので、そう言って頂けて嬉しいです。頑張ります! (2022年1月28日 18時) (レス) id: 7471f44b15 (このIDを非表示/違反報告)
麗羅(プロフ) - コメント失礼します!すごく面白いです!夢主ちゃんが剣道が得意で明るい性格っていうのがすごく好きです!更新楽しみにしています! (2022年1月27日 22時) (レス) @page2 id: 90634de060 (このIDを非表示/違反報告)
海鈴(プロフ) - みこちさん» ありがとうございます! (2022年1月14日 22時) (レス) id: 7471f44b15 (このIDを非表示/違反報告)
みこち(プロフ) - 海鈴さん» もしも、この作品にゲストが出るとしたら、雑渡さんか兵庫水軍の皆さんが現れてくださったら…なんて考えてしまいます。応援します! (2022年1月13日 12時) (レス) id: e0b3c2b120 (このIDを非表示/違反報告)
みこち(プロフ) - 海鈴さん» 後も一つ、犬夜叉と鬼狩りという奴も在りますよ。出来ますれば、コメントを頂けたら嬉しいです。どんなコメントでも大歓迎です。 (2022年1月11日 21時) (レス) id: e0b3c2b120 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海鈴 | 作成日時:2022年1月9日 22時