総髪揺らして竹刀片手に、天女さまが通る！【忍たま乱太郎】

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『……っ、』


鋭い何かが、頬を掠める。

ちくりとした痛みと共に、頬から顎を生暖かいものが伝った。


『え……』


何、今の……


少し視線を移せば、顔のちょうど横、木に刺さったものが目に映る。


光沢を帯びていて、黒くて鋭利な何か＿


そこでようやく、私を目掛けて刃物が飛んで来たのだと分かった。


『なっ……何するんですか！！』


……もう、逃げるしか無い。

そう覚悟して急いで立ち上がろうとしたけれど、奥の方から出て来た誰かにぐっと手首を押さえつけられた。


『っ、痛、』

「動くな、天女……！」


尽かさず、首筋に刃物を当てられる。
切先が食い込む感覚に、じわりと冷や汗が出た。


「妖術を使ってみろ、命はないと思え」


とても、冷たい声……

思わず顔を上げると、さっきまでの人達と違って青紫の装束を着ている男の人と目が合った。

骨が折れそうな力で押さえつけられ一瞬怯んでしまうけれど、私も負けずに睨み返す。


『妖術……？いや、離して！！』

「とぼけるな！」

『とぼけてなんてないですけど！』


……本当になんなのこの人、いや、この人達！


天女だとか妖術だとか、ずっと意味の分からないことばかり話している。

服装も髪型も、まるで昔の人みたいだ。


……どうしよう。

スマホさえ出せれば、警察に連絡出来るけど……



なんとか隙を狙えないかと考えたその時、木の上からまた誰かが降りて来た。


「待て三郎、五年生は上で待機だって言われてただろ」

「勘右衛門」


"勘右衛門"とやけに古風な名前で呼ばれたその人は、私をちらりと一瞥してから緑の人達に頭を下げる。

彼も私を押さえつけている人と同じ、青紫の装束を着ていた。


「先輩方、すみません。三郎が勝手に」

「いや、別に構わんが……」


私には気を留めず、会話を続ける緑の人と青の人。

どうやら、私を押さえつけている人の名前は"三郎"というらしい。

暫くして、先程まで色白の人の左後ろにいた人がこちらに振り返った。


「鉢屋、とりあえず手を離せ」


その言葉に、私と睨み合いをしていた"三郎"さんは怪訝そうな表情を浮かべる。

そして、抵抗するように口を開いた。


「ですが、潮江先輩」

「鉢屋」

「……はい」



徐々に、抜かれていく力。


……今だ！


『ふんっ……！』

「……何っ！？」


手が離れたその瞬間、体を大きく捩って走り、怪しい人達の背後に回る。

尽かさず四方から飛んできた武器を、竹刀で弾き飛ばした。

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