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夜＿
一日というものは、あっという間に過ぎていく。
すっかり暗くなった外からは、しきりに虫の声やふくろうの鳴き声が聞こえてきた。
『……ふぅ』
ほかほかと暖まる身体に、息をつく。
お風呂から上がった私は部屋でひとり、置いたままになっていた荷物に手をつける事にしていた。
ここに来てわざわざ整理する必要もそこまで無いが、何かここで生きるのに役に立つものが入っているかもしれない。
『うわあ』
乱雑に置かれたスクバを開けてまず目についたのは、ギュウギュウに詰められた教科書。
中に、テストやプリントが挟まっている。
『……おい昨日の私、もっと綺麗にできないのか』
そうため息をついても、もちろん誰も答えてはくれない。
ならば、ととりあえず内ポケットを探ってみると、櫛や髪ゴムやリップなど、普通に使えそうなものも出てきた。
さらに、その拍子に手に触れた厚い教科書を引き抜いてみる。
『お、歴史の資料集だ』
確か、水曜の授業で使ったんだっけ。
めくってみれば、ありがたいことに"室町時代の生活"というページもある。
まさか、こんな形で読むとは思わなかったけれど……
これもあとで読み込んでおこうと、付箋をつけておいた。
『あとは、スマホか……』
向こうに手を伸ばし、畳んであるスカートのポケットから丁寧にスマホを取り出す。
たくさんぶつけたし、そもそもこの時代にはスマホなんてないからデータが飛んでいるかもしれない……
とまあ、正直これが一番心配だったけれど、あんがいすんなりと電源がついた。
『……あっ』
思わず、声を上げる。
やはりネットは繋がらないし、日付表示は文字化けしていた。
けれど、カメラロールをタップしてみれば、今まで撮った写真が画面いっぱいに表示されたのだ。
『みんな……お母さん、お父さん』
料理しているお母さんを隠し撮りした写真。
友達とテーマパークに行ったときの動画。
当時は何気無く撮っていたそれらが、今はすべて貴重なものに見える。
ひとつひとつの写真を見れば、その時の会話や空気を、まだ鮮明に思い出せた。
『……大丈夫。私は、私を無くさないから』
目を閉じて、自分に言い聞かせるように呟く。
これ以上写真を見れば、きっとまた寂しくなってしまう。
次にこれを見る時は、この時代から帰る時だ。
『……よし』
静かに電源を閉じ、スマホをしまう。
夜風に誘われるように、私は立ち上がった。
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海鈴(プロフ) - 麗羅さん» わぁあありがとうございます！性格についてはかなり考えたので、そう言って頂けて嬉しいです。頑張ります！ (2022年1月28日 18時) (
レス) id: 7471f44b15 (このIDを非表示/違反報告)
麗羅(プロフ) - コメント失礼します！すごく面白いです！夢主ちゃんが剣道が得意で明るい性格っていうのがすごく好きです！更新楽しみにしています！ (2022年1月27日 22時) (レス) @page2 id: 90634de060 (このIDを非表示/違反報告)
海鈴(プロフ) - みこちさん» ありがとうございます！ (2022年1月14日 22時) (レス) id: 7471f44b15 (このIDを非表示/違反報告)
みこち(プロフ) - 海鈴さん» もしも、この作品にゲストが出るとしたら、雑渡さんか兵庫水軍の皆さんが現れてくださったら…なんて考えてしまいます。応援します！ (2022年1月13日 12時) (レス) id: e0b3c2b120 (このIDを非表示/違反報告)
みこち(プロフ) - 海鈴さん» 後も一つ、犬夜叉と鬼狩りという奴も在りますよ。出来ますれば、コメントを頂けたら嬉しいです。どんなコメントでも大歓迎です。 (2022年1月11日 21時) (レス) id: e0b3c2b120 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：海鈴 | 作成日時：2022年1月9日 22時
