総髪揺らして竹刀片手に、天女さまが通る！【忍たま乱太郎】

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「あらま、どうしたの……！？」

『……っ、すみませ、』


咄嗟に手で顔を抑える。

やってしまった、と思った。


よりによってこんなことろで、こんな人前でめそめそ泣いてしまうなんて。


二人を驚かせたし、何より情けないにも程があるだろう。



けれど、止まれと思えばより一層、涙は止めどなく溢れるものであり＿



こわい、かえりたい、つらい、くやしい……


そんな感情が胸に渦巻いて、とても堪えきれなかった。



「大丈夫？体調悪いの？」

『ちが、います、』


山本さんの言葉に、私は必死に首を振る。


勿論おばちゃんの料理は本当においしいし、体調も全然元気だ。



……ただ、私が弱いだけ。


嗚咽を止めようと、ぐっと息を呑み込む。

片手で涙を乱暴に拭って、私は口を開いた。



『肉じゃが……たべたら、なんか、っ、安心しちゃって……お母さんのこととか、いろいろ思い出して、』


『そしたら、急に……、っ、寂しく、なって、お恥ずかしいんですけど、』



ここまで話して、もう一度顔を伏せる。


途切れ途切れに漏らしたその言葉は、自分でも何を言っているのかよく分からなかった。


きっと今の私からは、考えたことよりも、頭に浮かんだことが先に出てしまっているから。



「まあ、そうだったのね」

『はい、っ、』


おばちゃんも山本さんも呆れてるんだろうな、と両手を握りしめる。

けれど、少しの間を置いて聞こえた山本さんの声は、とても優しいものだった。



「頑張ったわね、Aちゃん」

『えっ……』


驚いたのは、名前で呼ばれたことだけじゃない。


ふわり、と広がる温もり。

山本さんに、私は抱きしめられたのだ。



『や、山本さん！？』


驚いて顔を上げる。

山本さんは、言葉を続けた。


「……我慢なんて、しなくていい。泣くことは恥ずかしいことでも悪いことでもないのよ」



確かに、そうなのかも知れない。

私が意地を張ってるのかも知れない。


けれどどうしても、自分が許せないのだ。


『でも、私、』


「寂しいって思うのはね、誰か想えるからこそなのよ。人の為の涙のどこが情けないの」


「泣きたいときは泣いて、そしたらまた立ち上がればいいのよ……強くなる為には、涙も必要なんだから」


『っ、』


身体の力が、抜けていく。

行き場のない手は、いつの間にか山本さんの腰に回った。



『うわぁあん』


私は、泣いた。

人目も憚らず、今までに無いくらいに声を上げて、思いっきり泣いた。

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