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「……ったく、あの子達は」
山本さんが、ふう、とため息をつく。
_結局、あの二人はすぐに去っていた。
私を睨みつけて、こう言ってから。
「今日は引きますけど、僕らは正直納得いってないですよ。前のように、天女は殺すべきだ」
「……天女を見るだけで、反吐が出る」
『……、!』
ある程度の覚悟してはいたけど、正直……ここまで天女が疎まれているとは思っていたなかった。
きっとこの場所には、味方とか安全なんてものは存在しない。
身体も動かなくて、山本さんがいなければどうなっていたことか。
何か言ってやろうと思ったけれど、学園長先生の話が頭をよぎって、何も言えなかった。
そして何よりも、襲われたことが怖いと思ってしまった自分にどうしようもなく腹が立つ。
自分の身さえ自分で守れないなんて、と。
「平気?」
『すみません、迷惑かけて』
山本さんが駆け寄って来てくれたけれど、顔を上げる事が出来ない。
私を守りながら彼らに応戦できていた山本さんを見て、戦えるなんて思っていた自分がどうにも恥ずかしくなった。
「迷惑なんかじゃない。気にしないで、あなたは何も悪くないんだから」
『え……』
"あなたは何も悪くない"
予想外の優しい言葉に、思わず声を漏らす。
『でも私……何も出来なくて。きっと竹刀持ってても、ただ見てただけだったと思います』
「戦おうと思ってたの?」
目をぱっと見開く山本さん。
私は俯いたまま、小さく頷く。
すると、山本さんが私の肩に手を置いた。
「あなた、強いのね。それにとってもいい子」
『えっ』
……今、この人、なんて。
驚いて、顔を上げる。
山本さんは、とても優しい笑みを浮かべていた。
『なんで……あなたも、天女を恨んでる筈なのに』
言ってはいけないと分かっているのに、そんな言葉が口をついて出る。
声が震えて、うまく喋れなかった。
山本さんは私の肩に手を置いたまま、口を開く。
「確かに、そうかもしれない。でも、あなたはあなたでしょ?」
『でも、』
「私ね、今まで色んな子を見てきた。だから分かるのよ、あなたは信頼できるって」
"信頼できる"
この一言を、これ程嬉しく思ったのはいつ振りなのだろう。
色々な感情が混ざって、言葉が出なかった。
「ねえ……少し寄り道しない?」
暫くして、山本さんがゆっくりと立ち上がる。
『どこにですか?』
私が首を傾げると、山本さんはまた、微笑んだ。
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海鈴(プロフ) - 麗羅さん» わぁあありがとうございます!性格についてはかなり考えたので、そう言って頂けて嬉しいです。頑張ります! (2022年1月28日 18時) (レス) id: 7471f44b15 (このIDを非表示/違反報告)
麗羅(プロフ) - コメント失礼します!すごく面白いです!夢主ちゃんが剣道が得意で明るい性格っていうのがすごく好きです!更新楽しみにしています! (2022年1月27日 22時) (レス) @page2 id: 90634de060 (このIDを非表示/違反報告)
海鈴(プロフ) - みこちさん» ありがとうございます! (2022年1月14日 22時) (レス) id: 7471f44b15 (このIDを非表示/違反報告)
みこち(プロフ) - 海鈴さん» もしも、この作品にゲストが出るとしたら、雑渡さんか兵庫水軍の皆さんが現れてくださったら…なんて考えてしまいます。応援します! (2022年1月13日 12時) (レス) id: e0b3c2b120 (このIDを非表示/違反報告)
みこち(プロフ) - 海鈴さん» 後も一つ、犬夜叉と鬼狩りという奴も在りますよ。出来ますれば、コメントを頂けたら嬉しいです。どんなコメントでも大歓迎です。 (2022年1月11日 21時) (レス) id: e0b3c2b120 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海鈴 | 作成日時:2022年1月9日 22時