ポータルの扉を叩けば

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「痛っ！」



私は濡れた地面に転んだ。




その地面は白と黒。



大丈夫ですか？と、後ろの女の人が声をかけてくれる。





「すいません…、大丈夫です…。」





私は傘と自分の鞄を広い上げ、横断歩道を渡る人の

流れに、何事もなかったかのように乗った。







横断歩道を渡り終えた私は、重い足取りで路地裏に

入り自販機の陰にうずくまる。






帰ってきたんだ…。




帰ってきちゃったんだ…。




振り続ける雨で濡れている地面に、私の涙も混ざる。





あのタイミングで帰ってきちゃうとか…ありえない

でしょ…。






助けに来てくれたみんなに、お礼も言えてない。






翔平くん、一緒にふざけたりトランプしたり楽しか

ったね。次は負けないから。




慎くん、たくさん帰る方法を一緒に考えてくれてあ

りがとう。壱馬くんをよろしくね。




北人くん、説教しちゃってごめんね。でも自分を大

切にしてくれるようになって嬉しかったよ。病気、

絶対治してね。






そして…、



壱馬くん、大好き、愛してる。


そしてごめんね…。


最後の最後まであなたには迷惑ばかりかけて、本当

に嫌な女だよね…。



そんなことねぇよって、また言ってくれるかな？


もっと一緒にいたかったよ。


もっと二人で色んな話ししたかったよ。



これからも、みんなを守ってね。






伝えたかった想いが、自分の中でぐちゃぐちゃになる。


そしてその分、涙も止まらない。









それからの日々は、今までと変わらなく過ぎていく。




私が異次元にいたなんて、夢だったんじゃないかっ

て思うくらい。



でも、壱馬くんへの想いは変わらない。




テレビや雑誌で見る彼を見ると、胸が締め付けられる。







だけど、こっちの壱馬くんは壱馬くんでも、別人の

ようなもの。



私のことなんて、これっぽっちも知らないんだか

ら…。








そして私が異次元へ行った梅雨の時期から、季節は

秋になろうとしている。





今日はお休み。



だけど、家でゴロゴロしてるならちょっと買い物し

てきて！と母に追い出された私はスーパーのビニー

ル袋を下げて、家までの川沿いをとぼとぼ歩く。







ここの川沿いは、紅葉が綺麗に彩る場所で、地元じ

ゃちょっとばかし有名で、その季節には川沿いを歩

く人が増える。

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