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「亜嵐さんにはうちの衛生兵の命を沢山救ってもらっているし、ほんと頭が上がりません」
「いやいやとんでもない。それが俺の仕事なんで」
「あれ、白濱さんが謙遜…」
「いやいや俺超謙虚だから。超へりくだってるからいつも」
私の斜向かいに座る白濱さんの言葉に、私は紅茶を飲みながらくすくす笑った。
白濱さんとこうしてゆっくりお茶するのは初めてかもしれない。彼は話がとても上手でユニークなセンスも持ち合わせているから、こうして聞いているのがとても楽しいのだ。
「あ、そうそうこの前白濱ママが頭が痛いって内科の方にいらっしゃってましたよ。偏頭痛みたいでした」
「そうなんだよ、うちの母ちゃん偏頭痛持ちで気圧低くなると大変らしい。まぁいつもうるさいし気圧低くなって静かになったくらいが丁度いいんだけどね」
「あはは、肝っ玉母ちゃんって感じですもんね、白濱ママ。弟さんと妹さんも元気そうでしたよ、一緒に来てましたけど」
「Aちゃんと叶さんには家族ぐるみで世話になってんなぁ、ありがとう」
「いやいや。白濱家は大体Aの管轄だし、私はなにもしてませんよ。お礼ならAに」
「とんでもない!これが私の役割ですから」
役割。仕事。果たすべき義務。
戦地に赴くことすらできない私が誰かを支えられるのならば、こんなにも嬉しいことはない。
しかし私がこう言うと、白濱さんはいつもどこか寂しげに笑う。
いくつもの死線をくぐり抜けてきた人だ。もしかしたら暗い過去を抱えているのかもしれない。思うところがあるのかもしれない。
私が癒してあげられたら。
そう思いながら、私はすっかり温くなった紅茶を啜った。
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かな - 続き楽しみです! (2020年10月10日 22時) (レス) id: 95ffd40df7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ねこた | 作成日時:2020年9月17日 3時