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「覚えてます?初めて私が白濱さんの治療をした日のこと」
白濱さんの肩がぴくりと揺れた。
『あ、どうもはじめまして、GENERATIONSの白濱亜嵐です。いきなりで悪いんだけど血が止まんないからこれ手当してくんない?』
10ヶ月ほど前か。太ももからダラダラ血を流しながらヘラヘラ笑っているイケメンが自力で野戦病院にやって来たものだから、私の方がひっくり返ってしまった。色々な意味で驚いたのだ。
「あの時はほんとびっくりしましたよ。物資がなかったから麻酔がギリギリで、最後の数針はもうほとんど切れかかってて。それでも白濱さん歯を食いしばって耐えてくれて。あんなに人の怪我を治すのが恐ろしいと思ったことはありませんでしたよ」
「…別に痛くなかったんだよ、全然」
「はいはい」
抜糸が全て終わったところで、私はむき出しの背中をぽん、と叩く。
「…もう、あんな状況にはさせません。私の医師としての責任です」
あの日から白濱さんは私が戦争で野戦病院に出向している時は大体顔を合わせるし、街の病院に戻ってきても処置の最終確認等で頻繁に会うように。医者と患者、衛生班と実働部隊という立場に変わりはないものの会った時に砕けた会話をしたりもする。
確かに白濱さんは女の人にモテているが、思ったよりはチャラくなかった。もちろん冗談などでふざけているのが常だが、その隙間からは彼の素朴で真面目な核の部分が見え隠れしている。
いい人なのだろう。とても。
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かな - 続き楽しみです! (2020年10月10日 22時) (レス) id: 95ffd40df7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ねこた | 作成日時:2020年9月17日 3時