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当時病院に収容されていた兵士や衛生班のスタッフ含め半数以上が死亡。
Aの姉の叶さんは幸運なことに軽傷で済んだが、Aは瓦礫が頭部を直撃し意識不明の重体にまで陥っていた。
3日後、意識を取り戻した時に爆破当日から遡って5年間の記憶がすっぽり抜け落ちてしまっていることが判明した。
叶さん曰く、頭部への強い衝撃による記憶障害。失われた直近5年分の記憶がいつ戻るかは定かではないし、戻らない可能性もあると。
俺のことなど全く覚えていないAは今、喪ったかつての恋人を想い泣き暮らしている。
それを聞いた瞬間に、Aに会いに行くのが怖くなった。
もう一度俺のことを好きになってくれる保証などどこにも無い。
今の俺では、今の彼女を悲しみの淵から掬い上げることはできないのかもしれない。
迷い、悩み、2ヶ月が経っていた。
冷戦状態にあったその陣取り合戦が再度始まり、俺はまた前線へ駆り出された。普段なら有り得ないミスをおかし、足に怪我を負った。
今しかない。
今彼女に会いに行かねば、俺は二度と彼女の顔を見ることはないのかもしれない。
そう思って、傷ついた足を無理やり動かし自力で建て直された野戦病院へ向かった。
彼女は変わらずその病院の救世主だった。
俺が知る前までの彼女がそこにいた。
無意味な笑みが口元に張り付いて動かない。そこから出た声は、少し震えていた。
「あ、どうもはじめまして、GENERATIONSの白濱亜嵐です。いきなりで悪いんだけど血が止まんないからこれ手当してくんない?」
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かな - 続き楽しみです! (2020年10月10日 22時) (レス) id: 95ffd40df7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ねこた | 作成日時:2020年9月17日 3時