君に最後の告白を【Alan.S】 (ページ11)

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「変化なし、だね」
「…ごめん」

小さく謝る私の頭を、お姉ちゃんの手のひらがくしゃくしゃと撫でた。

「あんたが謝ることじゃない。こればっかりは仕方ないんだよ」
「……うん。そう、だよね」

普段は医者であるはずの私が、この日ばかりは心細い患者の立場になる。

症状に改善が見られず、なおかつ明確な治療法もなくただ待つしかないこの現状が、たまらなく不安で恐ろしくなる。

いつもは忙しさにかまけて見ないようにしている事実を改めて振り返ると、自分がひどくちっぽけで無力な存在に思えてしまうのだ。

はたり、私の貧相な手の上に雫が落ちる。

「…っ、お姉ちゃん……ッ」

お姉ちゃんが、黙って私を抱き寄せた。この世界でたった1人の家族。

今の私が頼れるのはお姉ちゃんしかいないのだ。

「私の記憶…、いつになったら戻ってくれるのかな」

お姉ちゃんの腕の中で小さな子供のように泣きじゃくる。

シワひとつない白衣に、私の涙が落ちて染みが広がっていく。

1年前のある事件を起点として、私の記憶はそこから遡って5年間がすっぽりと抜け落ちてしまっているのだ。

そう。

私は、記憶喪失に陥っていた。