検索窓
今日:11 hit、昨日:6 hit、合計:43,932 hit

No.78 優しい ページ31

「でも、俺・・・・・・でも・・・・・」



若武は先生が慰めているのに、全くと言って無駄だった。

ずっと泣き続けていた。



「あとちょっとだったのに・・・・皆、口に出さないだけで俺のこと責めてる・・・・・」

「そんなわけないでしょう。それに、今回負けちゃった理由は・・・・・・・」



相川先生がそう言いかけた時、私のことを言われると思った。


だって、間違いなく私のせいで負けたから。


怖かった。


「立花さんのせいで負けたんです。」


なんて言われると思ったら。


私はその場を逃げていた。

もしかしたら私以外の何かを言っていたのかもしれない。

けれど、既にその場を去っていたので、続きの言葉は知らなかった。



必死に走って学校を出る。

家に着くまでずっと走っていた。


ようやく家に着くと、走るのをやめ、家に入る。



「彩、お帰りなさい。遅かったじゃない。秀明間に合うの?」


「ちょっと体育着忘れちゃってね、取りに行ってて・・・・・・」


「そう、なら良かったわね、持ち帰って来れて。秀明に行く時間もうすぐだから早くしちゃいなさいよ。それと、運動会お疲れ様。」


「・・・・・・・うん・・・・・・」


「・・・・・・・・・・今日は、秀明、休みましょっか。」


「えっ?」


ママの口からそんな言葉が出るだなんて。

休む?

ママ、本気?

いつもはそんなこと許さないのに・・・・何で?


「運動会で疲れたでしょう?それに、今からじゃ間に合いそうもないし・・・・・休みなさい。お菓子用意してあげるから。」


ママはいつもより優しかった。

その理由は何となくわかった。



テーブルには、パンケーキと紅茶が置かれている。

私はそれを少しずつ食べ、飲んでいた。



「リレー、出れてよかったわね。聞いた話だと、女の子が怪我しちゃって代わりに彩が出た、って。」


「うん、そうだよ。茜・・・豊原茜ちゃんって子、すごく速い子なんだけど、怪我しちゃったから私が出るしかなかった。」


「そうだったのね。まぁ、負けちゃったとはいえ、彩は頑張って走ってたし、私は満足だったわよ。」



それじゃ駄目なんだよ・・・・・


心の中でぽつりと呟く。



「悔しいだろうけど、初めて代表リレーに出れて、良かったんじゃない?」


「・・・・・・・・・・」


「・・・それ食べちゃったら休みなさい。疲れてるんだから。」



ママはそれだけ言って席を外した。


私は涙を流しながらパンケーキを口に運んだ。

No.79 チャンス→←No.77 2人の会話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (44 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
47人がお気に入り
設定タグ:探偵チームKZ事件ノート , 小学生 , 後編   
作品ジャンル:その他
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

愛莉 - 続きがすごく気になります!! (2月2日 15時) (レス) @page32 id: abf6832c1a (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - 続きみたいです! (2020年5月14日 14時) (レス) id: 9ecc4550ca (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - はい、頑張ってください!応援してます! (2019年3月29日 18時) (レス) id: 8df2bc3d9f (このIDを非表示/違反報告)
葉月(プロフ) - 彩さん» ありがとうございます!大好きだなんて言ってくれて嬉しいです。更新頑張ります! (2019年3月29日 18時) (レス) id: 75ace9b1e5 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - このお話大好きです!、これからも頑張ってください! (2019年3月29日 17時) (レス) id: 8df2bc3d9f (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:葉月 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/mirukuzery/  
作成日時:2019年3月10日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。