No.78 優しい ページ31
「でも、俺・・・・・・でも・・・・・」
若武は先生が慰めているのに、全くと言って無駄だった。
ずっと泣き続けていた。
「あとちょっとだったのに・・・・皆、口に出さないだけで俺のこと責めてる・・・・・」
「そんなわけないでしょう。それに、今回負けちゃった理由は・・・・・・・」
相川先生がそう言いかけた時、私のことを言われると思った。
だって、間違いなく私のせいで負けたから。
怖かった。
「立花さんのせいで負けたんです。」
なんて言われると思ったら。
私はその場を逃げていた。
もしかしたら私以外の何かを言っていたのかもしれない。
けれど、既にその場を去っていたので、続きの言葉は知らなかった。
必死に走って学校を出る。
家に着くまでずっと走っていた。
ようやく家に着くと、走るのをやめ、家に入る。
「彩、お帰りなさい。遅かったじゃない。秀明間に合うの?」
「ちょっと体育着忘れちゃってね、取りに行ってて・・・・・・」
「そう、なら良かったわね、持ち帰って来れて。秀明に行く時間もうすぐだから早くしちゃいなさいよ。それと、運動会お疲れ様。」
「・・・・・・・うん・・・・・・」
「・・・・・・・・・・今日は、秀明、休みましょっか。」
「えっ?」
ママの口からそんな言葉が出るだなんて。
休む?
ママ、本気?
いつもはそんなこと許さないのに・・・・何で?
「運動会で疲れたでしょう?それに、今からじゃ間に合いそうもないし・・・・・休みなさい。お菓子用意してあげるから。」
ママはいつもより優しかった。
その理由は何となくわかった。
テーブルには、パンケーキと紅茶が置かれている。
私はそれを少しずつ食べ、飲んでいた。
「リレー、出れてよかったわね。聞いた話だと、女の子が怪我しちゃって代わりに彩が出た、って。」
「うん、そうだよ。茜・・・豊原茜ちゃんって子、すごく速い子なんだけど、怪我しちゃったから私が出るしかなかった。」
「そうだったのね。まぁ、負けちゃったとはいえ、彩は頑張って走ってたし、私は満足だったわよ。」
それじゃ駄目なんだよ・・・・・
心の中でぽつりと呟く。
「悔しいだろうけど、初めて代表リレーに出れて、良かったんじゃない?」
「・・・・・・・・・・」
「・・・それ食べちゃったら休みなさい。疲れてるんだから。」
ママはそれだけ言って席を外した。
私は涙を流しながらパンケーキを口に運んだ。
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愛莉 - 続きがすごく気になります!! (2月2日 15時) (レス) @page32 id: abf6832c1a (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - 続きみたいです! (2020年5月14日 14時) (レス) id: 9ecc4550ca (このIDを非表示/違反報告)
彩(プロフ) - はい、頑張ってください!応援してます! (2019年3月29日 18時) (レス) id: 8df2bc3d9f (このIDを非表示/違反報告)
葉月(プロフ) - 彩さん» ありがとうございます!大好きだなんて言ってくれて嬉しいです。更新頑張ります! (2019年3月29日 18時) (レス) id: 75ace9b1e5 (このIDを非表示/違反報告)
彩(プロフ) - このお話大好きです!、これからも頑張ってください! (2019年3月29日 17時) (レス) id: 8df2bc3d9f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:葉月 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/mirukuzery/
作成日時:2019年3月10日 19時