何色の花ですか？ (ページ21)

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episode１８ページ21

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ふといつもの席に目をやると、どこか見たことのある後ろ姿。

『へっ？』
まさか！と、とんでもない声が飛び出した。

私の脳内ではうまく処理しきれなかったようで、頭の中は少々パンク気味。
彼の家はこの辺なのだろうか？いや、私が見間違えただけ？

だって入社してすぐこの隠れ家を見つけて、それからもう3年近く通い詰めているが、一度だって見かけたことは無い。それどころかあの席に人が座っているのは稀な話で、常連さんであれば大体の人がカウンター席に座るので奥のテーブル席はあまり使われない。
私も奥さんと話すときはいつもカウンターに赴く。

無論、このお店は8割方常連客で成り立っている。

こういう時、人はありもしない事実を無理やり作ろうと試みる。
彼は双子で今いるのは双子のお兄ちゃんで、たまたまここに来ていた...とか。

何より、ここはだれにも知られたくなかったし知られていないと思いたかった。

仕事、というワードから解放される場所にしたかったから。

そんな小さな期待を込めた妄想は、バッサリと切り落とされてしまった。

不意に月明かりを眺めようとしたのか、静かに顔を上げた。その美しい横顔は紛れもなく彼だった。