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第5章-6 ページ42

(数か月から数年かかるって聞いてたのに?)

 疑問で私の頭は埋め尽くされる。

「どうして……!投降するってば!」

 泣き叫びながら見上げると、政府と言うにはやけに重武装した体格のいい男の人と、ヘルメット越しに目が合った。
 殺意に溢れ、その他の感情が感じられない冷たい瞳。『発症者と扱いが変わらない』というビーさんの声が脳に響く。

 そうか。
 ニュースは全部嘘。
 一人たりとも生かす気なんてない。


 発症者も、それに味方する人間も。


(クソがっ……!)

「グリーン1排除!イエロー複数、レッドなし!」
「予定は変更しない」
「了解」

 4人ほどぞろぞろ家の中に入ってくる。
 母が撃たれ――続いて夏も撃たれた。

「1階クリア!」

 そんなゲームでよく聞く台詞、ここで聞きたくなかった。
 と、私の目の前にずっと立っていた男の人が、私の眉間にハンドガンを突き付ける。

「すまんな。これが方針なんだ」

 1発の銃声が鳴り響く。
 ――けど、私はそれをちゃんと聞く前に、意識を永遠に失った。


 ◆ ◆


 ブー……、ブー……、ブー……、ブー……。

 どこかでスマホのバイブ音が聞こえる。
 ううん……どこかじゃない。
 枕元でアラーム音が鳴っている。

「ん……」

 私は布団の中から手だけ伸ばし、スマホを手に取った。
 アラームとばかり思っていたその音はLIMEの着信音で、見慣れたアイコンが震えていた。

「……もしもし」
「あ、つかさんやっと出た!」

 焦っているような、怒っているような声。
 電話の主は獣道。

(今日何か約束してたっけ……)
(ええと……思い出せない……)

 眠気なまこでカレンダーを確認。令和2年4月26日、日曜日。女神に休日も平日もないけれど、日曜日ならひょっとしたら何か予定があったかもしれない……。

「おはようけもさん……。今起きましたごめんなさい……」
「正直」

 そう言って獣道はため息をついた。

「裏天王()と天王()集まろうって言ってたじゃん。この日だよ。兄貴もまだ来てないから、多分家にいる。起こしてきてもらえる?」
「分かった……」

 電話を切り、あくびをしながら部屋の扉を開ける。
 その先のリビングでは、兄貴が熱いお茶を飲んで座っていた。

「おはようさん」
「おはよう兄貴、約束の日なの忘れてたよ……。というか、兄貴も遅刻だよね?何でまだここにいるの?」
「え?だってなぁ」

 兄貴はにへらと笑い、自分の頬を指差した。

第5章-7 END→←第5章-5



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作者名:めいろ | 作成日時:2019年12月16日 22時

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