第5章ー3 ページ39
とビーさん。
「よかった…………」
「夏ちゃんの他に動いてたあの影、あんたのお母さんだったよ」
「え」
「死ぬ間際に遺伝子が覚醒したのかなあ……?あたしには分からないや。Dr.イセなら喜ぶだろうけど。……ま、ということで怪我は回復傾向、無事青いオーラの持ち主になったって感じ」
「そう…………」
「あんたの父さんは、今夏ちゃんとお母さんに頭下げてるとこ。他の4人、そのうち3人は黄色だったけど、子供部屋で震えてたよ。漏らしてるのもいたわ。あっはっは」
「…………」
「……ま、うまくいきそうなんじゃない」
黙っていると、ビーさんは私の肩をぽんぽんと叩いた。
「ありがとうビーさん……。本当に、あなたに会えてよかった」
「それを言うのはまだ早いよ。さ、皆であたしと一緒に基地に行こう」
「……それなんだけど」
「?」
首を傾げるビーさん。私は深呼吸をした。
「私、ここに住み続けたいんだ」
「は?!」
予想通り。ビーさんは目を吊り上げた。
「何言ってんの?ここにいたら政府の奴らに殺されるって!言ったでしょ、政府に見つけ次第殺されるって……!暴動起こしてる奴らと扱いが全く変わらないって!」
「わかってる」
「わかってない!あんた死ぬよ!」
ビーさんは私の両肩を掴み、強く揺さぶった。
痛い。
「わかってるよビーさん。……でも、私、やっと本当の家族になれたと思うの」
「……」
ぴた、とビーさんは動きを止めた。
私はビーさんの目を真っすぐ見つめる。
「研究所に着くまでに、私が発症しないとも限らない。治療薬の手持ちはもうないんでしょ?道中で治療できないし、そうすれば私はビーさんたちについていくことはできなくなる」
「そんなことない。万が一異常を起こしても、助けるって!絶対!」
「研究所の人たちがそれを許してくれるか分からないよ。治療薬は、この世の感染者全員を治すにはまだ足りないんでしょ?スポセンでも『全然足りない』みたいな話してたもんね」
「……」
「それに私、ふらふら動き回って、どこにいるかも分からなくなっちゃうと思う」
「……それでも見つけるって!」
「でも、その可能性は否定できないんだよね?」
「…………」
黙り込むビーさん。
肩に食い込む指の力が少し弱まった。
「それなら、私、死ぬまでのちょっとの間でいいから、『家族』と暮らしてみたい」
「…………」
「人が人を殴ったり蹴ったりしない。暴言も吐かない。普通の――普通の暮らしがしてみたい」
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作者名:めいろ | 作成日時:2019年12月16日 22時