第4章-1 ページ31
森林公園を抜け、近道を使う。どんどん私の家に近づいている。
気づけば私とビーさんと兄貴さんしかいない。
他の人たちはどこから別行動になったんだろう?走るのに夢中で全く気付かなかった。
キョロキョロしながら走っていると、またビーさんに
「前見て走れ!」
と怒られてしまった。
「ごめん」
「ビー、そういえば」
兄貴さんが思い出したように切り出した。
「その子、えーと、邑さんやったっけ?『アレ』やってないからやない?それならキョロキョロするのもわかるわ」
「あ……そっか。忘れてた。ごめん邑」
「え?!」
(何?急に?)
(アレやるって何?)
(その言い方危険な香りしかしないんですけど!?)
「ダメだねーあたし、他の人がどんな立場かとか、全然考えてなかった。邑は未発症だもんね。目で見ないと分からないもんね」
「?」
(だから何が?)
私の疑り深い視線を無視して、ビーさんは前を指さした。
「ちょっとそこのコンビニ寄るよ!」
道路を渡れば私の家が目の前にあるけど、ビーさんは道路を渡らず、そのまま左側にあるテンクスに入った。
お店の中には店員も客もいない。
入店を知らせる音だけが響く。その音にビクビクしているのは私だけらしく、ビーさんは私を連れてずんずん奥に進み、お手洗いに入った。
兄貴さんは入口で待機している。
「え、何何何何?」
(何させられるの?)
(クスリ!?それとも……そんな趣味はないけど!?)
手を離すべき……?
でも入口には兄貴さんがいる。逃げられるとは思えない。
だけど、そもそも私をここでどうにかするメリットって何?
ぐるぐる考えながらも後をついていく(というか、手を握られているからついていくしかない)と、ビーさんは個室には入らず、その手前の手洗い場で立ち止まった。
私の手を離してツナギの胸ポケットから何かを取り出すと、私に「はい」と差し出した。
クスリをやらされる!
……と思わず両手で顔を隠したけど、ビーさんの手にはそんなものはなくて。
「……コンタクト?の箱?」
「それ以外に何に見える?それ何のポーズ?ボンオドリってやつ?」
「……」
私は黙って両手を下ろした。
「これはただのコンタクトじゃない。『新人』とそうじゃない人を区別できて、そんでもって遺伝子の異常も読み取れる優れもの」
コンタクトの箱にはそれっぽい写真と『02』と文字が書かれている。ビーさんは1つ取り出して私に見せた。
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作者名:めいろ | 作成日時:2019年12月16日 22時