第3章-4 ページ26
「どうする?あたしらは未発症者や、この人たちと一緒に基地に戻る。あんたも一緒に来る?」
「いいの?」
史恵菜が隣で嬉しそうに声を上げた。私はただただ地面を見ていた。
「……それともまず、家に寄ってみる?」
「!寄ってくれるの?」
「あんたのお母さんが亡くなっていなければ基地で治療できる。リスクはあるけど」
「失敗する可能性があるってこと?」
「失敗はしない。治療した後の話」
「?後遺症みたいな?」
「ビー、早く!」
とトロワさんが再び叫ぶ。
「わかってるってば!……リスクについては、道中で話す。亡くなっていればあたしらにもどうしようもできないし、道中、あんた自身が死なないとも限らない」
「……」
「あんたの家に他の未発症者も連れて皆でピクニック――ってわけにはいかないから、行くとしたらあんたとあたしと兄貴の3人で、歩いていくことになるね」
「……うん」
「まっすぐ基地に戻るなら、味方も多いし移動手段も車だし、あんたが死ぬ可能性は低くなる。あんたのお母さんのことはそこで大将――あー、治療とか全体を仕切ってる人なんだけど、その人に指示を仰ごう」
「うん……」
「で?どうするの?行く?戻る?」
ビーさんの質問を受けて、私は深呼吸した。
答えは1つしかない。
「戻らせてください」
「よしわかった」
頷くビーさん。兄貴さんを呼んでいた。私は視界を遮るぼんやりとしたものを、腕でごしごしとふき取る。
史恵菜ともここでお別れだ。
(ビーさんたちが助けに来てくれなければ、私は史恵菜も他の少女たちも全員巻き添えにして死んでいたんだ……)
(もっと何かできたかもしれないのに)
後悔で泥になって沈んでしまいそう。
……いつもこうだ。
何かが『他人の力で』どうにかなってから、私は『もっとできたはず』って反省するんだ。
そのときは自分のことが最優先なのに。
余裕があるときだけ他人の世話を焼いて、周りにいい顔をしながら、実は自分のことしか考えていないんだ。
(なんて、嫌な奴)
今だって――勿論母を助けたい気持ちもあったけど――母や妹が家で待っているのに自分だけ安全圏に逃げることを何か言われるんじゃないかとびくびくして、戻ることを選択したっていうのも、もしかしたらあるのかな……史恵菜の目を気にして、とか……。
分からないけど。
もう私は私を信じられない。
私は何を信じたらいいんだろう。
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作者名:めいろ | 作成日時:2019年12月16日 22時