第3章-1 ページ23
「あ、えと、その……」
「待ってよビー!」
まずはお礼を言うべきか、でも敵か味方かまだ判断できない……としどろもどろになっていると、うしろの廊下から青のツナギを着た男の人が走ってきていた。
さっき私を追ってきた男の人だ。あ、それでオレンジのツナギ――ビーと呼ばれた女の人はさっき私を追ってきたもう一人の方だ。顔をよく見たわけではないけど、青のツナギの人がずっとニヤニヤしていて、前髪で片方の目が隠れていたことは覚えているから、多分そう。
「兄貴はあっち!」
「はいさ!」
兄貴と呼ばれた男の人はくるりと向きを変え、バッティングセンター内で襲われている少女たちを助けていく。
『奴ら』は兄貴さんが近づくのを気づけないらしい。兄貴さんはそんなに筋肉質には見えないのに、楽々少女たちから『奴ら』を引きはがし、ひょいと『奴ら』を持ち上げる。
一瞬キラリと光ったものが見えたけど、何かは分からなかった。
奴らはぐったり倒れこんで――そのまま、起き上がらない。
「すごい……」
黙って見ていると、兄貴さんとビーさんの他、銃を持った黒いスーツの3人組が廊下からどかどかと集まってきた。
3人とも両肩に誰かを抱えながら、奴らに飛び蹴りをかましていた。
「未発症者は?」
と黒服の一人が聞く。先端だけが赤いキレイな白髪をうしろでまとめている。スーツのおかげで髪の色がとてもよく目立っていた。
「ここの子たちで最後かな」
とビーさん。
「アレは足りるん?」
「絶対足りない」
「1回基地に戻る必要があるんか……」
「あ、あの」
私は勇気を出して2人の会話に割り込んだ。
「ん?」
と2人は揃って私たちの方を向く。
「助けていただいて……ありがとうございました」
「ありがとうございました」
私に続いて、史恵菜もぺこりと頭を下げた。ビーさんは得意げに笑う。
「良く逃げ切った。いいよ敬語じゃなくて。あたしはビー。BPA……日本語だったら、えーっと、獣道?そう呼ばれてる」
「荒っぽいんよな」
「うるさい。こっちの黒服はトロワ」
トロワと呼ばれた、言葉に若干関西弁が混じる女性がひらひらと手を振った。トロワさんはビーさんに両肩の人を預けると、もう2人の黒服の人たちのもとへ走っていた。それをビーさんは目で追う。
「あっちの眼鏡かけてるほうのスーツはドゥ、その隣の短髪の方の白髪はアン。白髪だけどアン。笑うよね!」
「……」
「……えと」
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作者名:めいろ | 作成日時:2019年12月16日 22時