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第2章-9 ページ19

だから彼らがちゃんと家にいたのかは分からないけど、問題はその4人が『奴ら』にならないという確信も持てないこと。
 そして、夏が4人を家に迎え入れるのか否か――。

(考えても不安になるだけだ)
(変わり果てた姿だったら家に入れちゃダメって伝えたんだから。あとは信じるだけ)
(私に出来るのは、一刻も早く家に帰ることだけ)

 不安で乱れかけた呼吸をもう一度整え、「よいしょ」と立ち上がってお尻についた汚れをはらった。
 走って考え事に頭を使って、喉が渇いた。甘いものが飲みたい。

(あと救急救命士の人も探して……。他にも何か――ウリさんやヌエさん、ハルさんが来た時のために、役に立つものを色々探さなくちゃ)

 『奴ら』がいないことをもう一度確認して、自販機を探す。バッティングセンターをぐるっと囲むように出来ている廊下の、目立つところにあった。
 すぐ左側に女子更衣室がある。

(こんなところにあっていいの?開いたら中が簡単に見えちゃうんじゃない?)

 なんてどうでもいいことを考えながら、大容量、550ミリリットル!と書かれた清涼飲料水を選んで買う。
 その場で開けて飲んでいると、体操の格好をした少女たちが更衣室から出てきた。
 感染者?と身構えたが、少女たちは「こんにちはー!」と元気に挨拶をしてくれた。顔色も良い。誰も感染していないらしい。
 更衣室にいたから無事だったのかもしれない、と思いつつ、私は「シーッ」と先ほどのツナギの二人よろしく指を唇に当て、小さくこんにちは、と返した。

「え、邑?」

 聞き覚えのある声がして、私はひと際背の高い少女に目線を移した。髪を全てアップにし、おだんごにしているから分かりづらいが、かつて共に施設に住んでいた妹の一人の姿がそこにあった。
 貰い手が現れ、施設を去った史恵菜。残された『私たち』としては何だか気まずくて、私は顔をそらした。

「……無事だったんだね、史恵菜」
「何が?」
「えっ」

 私は驚いて史恵菜の顔を見上げた。
 特に嘘をついている様子もない。他の女の子たちも同様に、頭上にはてなマークが浮かんでいる。

(奴らが街をうろうろしていることを知らない……?)

 真実を伝えるべきだろうか。
 でも伝えたことで少女らが怖がりキャーキャー騒いだりしたら、逆に奴らをおびき寄せることになりかねない。
 そもそも、森林公園の最奥のスポーツセンターには元々『奴ら』がいなかった。

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作者名:めいろ | 作成日時:2019年12月16日 22時

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