39話 ページ39
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何も言えなくなった私を、意外にもせっつくようなことはしなかった鬱くん。
ショッピくんと何も無い事が分かっただけで満足したのか、ずっと私の肩口にグリグリと頭を押し付けていた。
「ちなみに言うとくけど、俺はAが好きやで」
「本当にちなみに言うじゃん」
あまりに突拍子もなかった紛れもなく告白のその言葉に、私は驚くことも忘れて言葉を返した。
そして数秒経ってようやく言葉の意味が徐々に輪郭を帯び始め、初めて鬱くんをまじまじと見つめる。
「………え？鬱くん、私が好きなの？」
「せやで。もっかい言うたろか？」
「じゃあ聞いとく」
「好き」
「……えー、」
「あーこれあかんわ、ほんまに好き」
どないしたらええの、とまた私を抱き寄せる鬱くんの背中にそっと腕を回した。
どうしようね、という言葉とともに。
言うだけ言って満足したのか、それ以上何も言わなくなった鬱くん。
『Aは俺のこと好き？』と聞かれても私は答えられなかっただろうから、気まぐれな鬱くんに今だけ感謝した。
「……んー…俺なぁ、Aにくっついとったら眠たなんねん、」
「うん……私も」
あれほど眠れないとここ最近そう思っていたのに、鬱くんの体温を感じれば一瞬で私の中から眠気が呼び覚まされたことに驚く｡
鬱くん同様、落ち着くのだ。この体温が。この空間が。
特にお酒が入っていた鬱くんは言葉尻と共に徐々に動きが鈍くなっていて、今にも私に完全にしなだれかかりそうな勢いだった。
「………A、寝れてないん、」
微睡む意識の中そこだけ引っかかったのか、とろとろの声でそう疑問を投げかけた鬱くん。
それに一つ頷いて、回した腕にギュッと力を込める。
「鬱くん、最近来てくれなかったから」
「え？……かわいいこと言わんといてよ、好き」
眠気からか語彙力の溶けた返事を返した鬱くんはポツリと言う。
「絶対なんもせぇへんから……Aと一緒に寝たい」
あかん？と窺うような弱々しい声色でそう尋ねられ、私の中に拒否をするという選択肢など全く存在しなかった。
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赤月セレン(プロフ) - コメント失礼します。物凄くお話にのめり込んで一気に読んでしまいました…とても良くてもう好きです（笑）tnさんの方の小説も楽しみに読ませて頂きますね。素敵なお話をありがとうございます、更新お疲れ様でした。 (2021年3月6日 22時) (
レス) id: f86cb701a2 (このIDを非表示/違反報告)
宙(プロフ) - ずきゅん (2020年8月28日 1時) (レス) id: a1083db659 (このIDを非表示/違反報告)
おいちこ(プロフ) - 完結おめでとうございます＆ありがとうございますっ！！凄い、素敵でした...2人が幸せに結ばれて、私も幸せですぅ...ニヤニヤ止まんなかったですぅ...新作も読ませていただきますぅぅ...!!!!更新、頑張ってください！！ (2020年4月25日 13時) (レス) id: 5a28085a2a (このIDを非表示/違反報告)
やち(プロフ) - 完結おめでとうございます！生活感のある日常に散りばめられたもどかしさと時々挿まれるドキッとする描写のバランスがたまらず、更新のたびにとても楽しく読ませていただきました。ゆららさんのsyp君がまた素敵で転がるほど好きでした…！次回作も楽しみにしています！ (2020年4月25日 6時) (レス) id: 6f58a85157 (このIDを非表示/違反報告)
椿(プロフ) - かげでこそこそと見させて頂いておりました。なんとも言えない大人のもどかしさがまた純愛のようなものが感じられてとても良い作品でした。完結おめでとうございます。 (2020年4月25日 2時) (レス) id: bbf23e1c65 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆらら
| 作成日時：2020年3月22日 1時
