17話 ページ17
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数分後、私と入れ違いにお風呂に引っ込んだ鬱くんはさっさと戻ってきて、タオルで頭をガシガシと掻き回しつつ隣に座った。
「シャンプーまだ買うてへんの？」
「忘れてたから鬱くんはボディソープで頭洗って」
「軋むやん。キューティクルがめちゃくちゃやで」
「うるさ、黙って」
タオルの隙間から香る同じ匂いが当たり前の私たちの日常は一般的に見れば非日常で、その日常に居心地よく身を委ねている私たちは″一般的な幼馴染″とは少々かけ離れた感覚を持っているらしい。
そもそも鬱くんに至っては、私を幼馴染と思っているのかどうかすら危ういけれど。
わざわざ洗面所から持ち出してきたのか、ドライヤーとクシを握った鬱くんは当然のように「ん、」と私にそれを差し出した。いや、別に珍しいことでもない。ただ、これが珍しいことでもないのがおかしいのかもしれない、と一般的感覚と照らし合わせてそんなことを考えてみる。
黙って受け取って今日もそれを受け入れた私は、いつまでボランティアを引き受けているつもりなんだろう、と膝立ちの私に頭を預ける鬱くんを見ながらそう思った。
「ええ男おった？」
お高いドライヤーは鬱くんから発された大きめの声より幾分静かで、その問いは私の耳にすんなり入り込んでくる。
細く柔らかい髪に指を梳かせながら、「いなかった」と短く返せば、肩で笑う気配。
帰り道からずっと不機嫌を引きずっていた鬱くんは、いつの間にか不機嫌をどこかへ置いてきたらしい。
「そっちこそ、彼女にしたい子いなかったの｣
「そんなん、おったら今俺ここおれへんよ｣
「、あっそ」
腹立つ、と頭皮を引っ掻いてやろうかと思ったけれど、また″凶暴な女″のレッテルを貼られるのはごめんなので冷たく返すだけに留めた。
カチリとオフにしたドライヤーのコードをクルクル巻いて、仕上げにクシで整えてやる私は『彼女にしたい子』より優先順位が低いらしい。恐らく私はお母さんの次に鬱くんに尽くしていると思うのだけど。非常に不服ながら。
「Aも乾かしたるよ」とあっさり奪われたドライヤーたちを不服なまま見送り、巻いたコードを器用に解くその指先が綺麗すぎることにまた腹が立った。
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赤月セレン(プロフ) - コメント失礼します。物凄くお話にのめり込んで一気に読んでしまいました…とても良くてもう好きです（笑）tnさんの方の小説も楽しみに読ませて頂きますね。素敵なお話をありがとうございます、更新お疲れ様でした。 (2021年3月6日 22時) (
レス) id: f86cb701a2 (このIDを非表示/違反報告)
宙(プロフ) - ずきゅん (2020年8月28日 1時) (レス) id: a1083db659 (このIDを非表示/違反報告)
おいちこ(プロフ) - 完結おめでとうございます＆ありがとうございますっ！！凄い、素敵でした...2人が幸せに結ばれて、私も幸せですぅ...ニヤニヤ止まんなかったですぅ...新作も読ませていただきますぅぅ...!!!!更新、頑張ってください！！ (2020年4月25日 13時) (レス) id: 5a28085a2a (このIDを非表示/違反報告)
やち(プロフ) - 完結おめでとうございます！生活感のある日常に散りばめられたもどかしさと時々挿まれるドキッとする描写のバランスがたまらず、更新のたびにとても楽しく読ませていただきました。ゆららさんのsyp君がまた素敵で転がるほど好きでした…！次回作も楽しみにしています！ (2020年4月25日 6時) (レス) id: 6f58a85157 (このIDを非表示/違反報告)
椿(プロフ) - かげでこそこそと見させて頂いておりました。なんとも言えない大人のもどかしさがまた純愛のようなものが感じられてとても良い作品でした。完結おめでとうございます。 (2020年4月25日 2時) (レス) id: bbf23e1c65 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆらら
| 作成日時：2020年3月22日 1時
