(24)俺だったら ページ26
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2時間ほど経ったころ、伏黒は目を覚まして驚いた
Aがベッドの方に突っ伏して、医学書と書かれた本を片手に持ったまま寝ていたのだ
そのままじっと見ていると、閉ざされた瞼に添えられた長く伸びたまつ毛が、白い肌に際立って美しく見えた
────直感で、勢いで
伏黒はおもむろにAの頬に手を伸ばし、少しだけ触れる
そして頬にかかった髪を指に絡ませては解き、また頬に手を添えた
「小南先輩 ……俺、あの映画撮影日から変なんです。
ふとした時に先輩のこと思い出して、時々考えるようになりました。
あと、たまに胸が苦しくなります。
…やっぱりおかしいですよね」
独り言を話しかけるかのようにぽつりぽつりと口から言葉を零していく
雨の中考えていたことを、少しずつ、少しずつ。
「この前、虎杖と小南先輩が廊下で座り込んでいたの見てたんです。そこで先輩が泣いてるのが遠くからでも分かりました。
でも虎杖が泣かせたわけじゃないっていうのはすぐ分かったので、行くべきじゃないって思ってそのときは直ぐに自分の部屋に戻ったんです。
…でも、後から虎杖が羨ましく思えてきたんです。
"俺があの場にいたら"って。"俺が泣いてる先輩の傍にいたかった"って」
伏黒が羨ましく思ったのはそれだけでは無い
Aが京都の任務へ行った時、東堂たちと会って虎杖を殺そうとしたときのことを怒ったことを聞いて、モヤモヤと胸の内に広がるものが次々と打ち寄せる波のように膨らんでいった
「小南先輩、」と空気が優しく震える声で、頬に添えていた手を、Aの手を掬いあげるようにその手を重ねた
「俺、小南先輩のことが好きです」
部屋に小さく零れた声が、葉から水溜まりに滴り落ちた雫のように広がった
声に出すと心臓がキュッ…と縮まる感覚に襲われ、重ねた手を離して胸を抑える
伏黒は小さく息を吐いて、気持ちを落ち着かせるためにもう一度横になると、不思議と落ち着いてそのまま眠りについた
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伏黒の意識が夢の中へと旅立ったころ、ゆっくりとAが身体を起こす
『………え?』
ベッドから上げた顔は、まるで熱がある伏黒のように赤く、紅く。重ねられていた手からドクドクと心臓の音が聞こえた
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ほやっく(プロフ) - souさん» コメント嬉しいです〜!!読んでくださりありがとうございました!!! (2022年1月23日 10時) (レス) id: f8046942e5 (このIDを非表示/違反報告)
sou(プロフ) - 完結おめでとうございます!お疲れ様です!私も恵くん大好きなのでオチが恵くんでとっても嬉しかったです!! (2022年1月22日 21時) (レス) @page40 id: 26a665cc7a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ほやっく | 作成日時:2021年3月3日 19時