自覚 ページ10
公園から歩いて10分程の距離にあるマンションの前でAさんは止まった。ここがAさんの住んでるマンションか。家族と一緒に住んでるのか一人暮らしなのかはまだ聞いていない。
でも耳が聞こえない事を考えると家族と一緒に住んでる可能性の方が高い。誰かと一緒に住んでた方が生活しやすいだろうし。ちょっと気になって聞いてみた。
《Aさんはここで家族と暮らしてるの?》
《一人暮らしだよ。お父さんもお母さんももうこの世にいないから》
そう書いたAさんの顔は悲しそうで。あぁ、俺は聞いてはいけない事を聞いてしまった。だからすぐに手話で謝った。
Aさんは気にしないでいい、と言うように首を横に振った。その顔は悲しそうに歪めたままだったけれど。
《ごめん》
謝罪の言葉をもう一度、今度はスケッチブックに書いた。何を思ったのか、Aさんは俺の手を握った。びっくりしたけどAさんの顔を見ると俺の目をしっかりと見ていた。そして口パクで“大丈夫”、はっきりと伝わった。
優しい人だ。本当はあまり答えたくなかった質問の筈なのに。そんな優しいAさんに俺は惹かれたんだ。
ご両親がいない今、Aさんは頼れる人がいるのだろうか?祖父母でも誰でもいい、そういう人がいればいい。でももし、いなかったら。俺がそういう存在になりたい。
《何か困ったことがあったら俺に相談していいよ。力になるから》
《ありがとう。モトキ君は優しいね》
そりゃあ、好きな人には頼られたいからね。認めるよ、俺はAさんが好きだ。好きだから、どんな些細な事でもいいから困ったら頼ってほしい。それでAさんが笑ってくれるならどんな事でもするよ。
《モトキ君、今日はありがとう。楽しかったよ》
《俺も楽しかった。また会ってくれる?》
《モトキ君の時間がある時ならいつでもいいよ》
それなら明日にでもまた会いたいよ。なんて、それは書かないけどさ。
また次会う約束をしてAさんはマンションのエントランスに入っていった。姿が見えなくなるまで見送っていると最後の最後にAさんが振り返った。手を振ると振り返してくれた。完全に姿が見えなくなってから来た道を引き返して歩く。
次はいつ会えるかなぁ。明後日から遠征で東京から離れるから、早くてもそれ以降か。でもAさんとLINEはできるし、暫くはLINEで我慢しよう。
そうだ、今日貰った絵は額に入れて飾ろう。どこに飾ろうかな。
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瀧(プロフ) - wwwさん» 作者もです笑 作者の願望が詰まった作品になっております笑笑 (2019年7月18日 22時) (レス) id: 5c3fcd6700 (このIDを非表示/違反報告)
www - ああ、こんな恋したい (2019年7月17日 18時) (レス) id: 423bf3fc22 (このIDを非表示/違反報告)
瀧(プロフ) - ひなさん» そう言っていただけて嬉しいです!頑張ります(≧∀≦) (2019年7月4日 14時) (レス) id: 5c3fcd6700 (このIDを非表示/違反報告)
瀧(プロフ) - wwwさん» ありがとうございます(*゚▽゚*) (2019年7月4日 14時) (レス) id: 5c3fcd6700 (このIDを非表示/違反報告)
ひな - この小説好きです。投稿頑張ってください! (2019年7月4日 0時) (レス) id: 0d818dd5f0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瀧 | 作成日時:2019年7月1日 0時