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きみへのメロディー(kt×ym) ページ16

kt視点


拝啓

やまちゃん、お元気ですか？
こっちの冬は寒いとは知っていたけど、日本とは違って毎日刺すような寒さです。



────こんな書き出しになってしまったメールを送って数時間後、


『お前、かってぇよ！
英語ばっか喋りすぎて日本語下手になったか？』


そう返ってきた。


ほんとはやまちゃんに聞いて欲しい話、伝えたい言葉、いっぱいあるんだけど上手く言葉に出来なくて。


寮の窓から見上げた空には、キンと冷えた藍色に零れそうな月が揺れていた。

きらきら光って、少し濡れているようなそれはやまちゃんの瞳みたいで、


『圭人！』

『ばーか、お前っ』

『…絶対、帰ってこいよ。待っててやるかは知らないけど』


笑った顔、怒った顔、泣きそうな顔が浮かんで思わずフッと笑みがこぼれた。


｢会いたい、な……｣


外の気温が氷点下なことなんてわかりきっているのに、少しでも近くで月を見たくて窓を開けて、桟に腰をかけた。


ピコン、
メールを受信した音に目を落とすと


｢やまちゃん、｣

『そっちはそろそろ朝？おはよ。
今日も頑張れよ』


簡単な言葉に、やまちゃんが滅多に使わない可愛らしい顔文字。

俺知ってるよ、やまちゃん。
その顔文字使う時はさ？



｢もしもし？今大丈夫？｣

『なんだよ。もう起きてんの？…つか起こした？わり、』

｢違うよ。午後休みだったから変な時間に寝ちゃって…早く起きたんだよね｣

『あーそう』


薮ちゃん、雄也に舞台が決まった話。
知念にドラマの主演が来た話。
いのちゃんの悪ふざけに珍しく大ちゃんが怒った話や、裕翔と二人でご飯にいった話。


｢やまちゃん｣

『んだよ』

｢なんかあったんじゃないの？｣

『っは？お前、』

｢光くんみたいな顔文字使う時は、やまちゃんが明るく見せようと無理してる時だってことくらい、圭人にはわかるよ｣


わがままで、マイペースで、でも誰より優しくて泣き虫で。

そんなやまちゃんのことが好きだよって伝えられずに発ったままの日本。


『……ゴリラのくせに妙なこと気づくんじゃねぇよバーカ』

｢ふふ、どうしたの？俺に言えること？｣

『っ言える、つーか…お前だから言えないっつーか…』

｢えー、なにそれ。寂しいじゃん｣

『……バカ圭人。あっさり言いやがって』

｢ん？｣

『寂しい…って。簡単に言うな。
俺だって、お前に言いたかった。圭人に会えなくて、寂しい』

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