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アナタノセイデ(hk×cn) ページ11

cn視点


"静岡から来てんだって？俺もね、仙台から通ってんの。移動大変でしょ"


大きな目をくるくる動かして優しく話しかけてくれた先輩。


"おなじ方向だったら一緒に長旅できたのにね"って、頭をよしよししてくれたのはもう10何年も前のことだ。


それなのにあれから変わらずずっと僕はかわいい弟みたいなポジションのまま。
僕としてはそんなんじゃなくて、ひかの恋人になりたいのに。


ひかの恋愛対象が女の子ならよかった。
それなら最初から叶うことなんてなくて諦められたし、今のポジションも甘んじて受け入れられたと思う。

────だからこそ僕は今、自分が女の子だったら良かったのにと思ってしまう。
大きな意味でのひかの恋愛対象じゃなくなれるから。


この業界、同性愛者は少なくないけどまさかひかが"そう"だなんて思わなくって、"そう"だと知った瞬間からこの想いは小さくなることを知らない。


｢お前はもう〜何してもかわいいね｣


大きくて骨ばった手でにこにこと褒められる度に嬉しくて、悲しくて、人より強いはずの心が壊れそうになる。


かわいい、って。
僕が望んでいる意味なんかじゃないでしょ？

僕のことをこんなに掻き乱せるのは、この世の中にひかだけなんだから。
事の重大さ、わかってる？



｢今日の撮影で光がさ、｣

｢え、なにそれ。そんなことあったの知らない｣

｢やぶひか解散だよ！とか言うから、近くにいた大ちゃんなんてすげぇ笑ってたよ｣


仕事の日も休みの日もよく共にする宏太との食事は、僕の知らないひかをたくさん知る時間。

知れて嬉しい自分と、宏太しか知らないひかを見せつけられて悔しい自分と。


…ひかの心を掻き乱せるのは僕じゃなくて、
多分、目の前でビールを飲む最年長だ。


本人から聞いたわけじゃない、誰から聞いたわけでもない。
それでもひかだけを見てきた僕からすれば、ひかの宏太を見る目線は特別だった。


…宏太だって、ひかの話ばかりしちゃってさ？
宏太のことは大好きだけど、この瞬間だけは少し嫌いだ。

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