愛を知らない夏 ［Taiga］

“彼” ページ10

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さすがにこの蒸し暑い時期に、
2日連続で同じ服を着るなんてのはできない。



一回帰らなきゃ、
そう思い、床に散らばった下着を拾って身につける。


机の上に、スマホを見つけて時間を確認する。
まだ時間があるな…シャワーだけ浴びて帰ろうかな？





浴室に入ると

鏡越しに、女の顔をした自分と目が合う。



朝帰りなんて、いつぶりだろう。

…最後に彼に抱かれたの、いつだったっけ。




お互い、わかっているのに
知らないふりしてる。


さっきスマホで時間を確認したときに見えた、彼からの
【今どこ？】
【もう寝ちゃったかな？おやすみ】
のメッセージに、すぐに返事ができなかった。





せっかく、
新しい恋が始まったばかりなのに

こんな憂鬱な朝は嫌だ、と鏡の中の自分から目を逸らすと、胸元にひとつ、出来たばかりの赤い印。



…いつ、付けられたんだろう。






何気なく続けている“彼”との関係と、
新しく始まりそうな“彼”との恋。


板挟みで苦しくって、
痛みをまぎらすためにその胸元の赤い花を撫でたら

もっと苦しくなった。



とりあえず今日は早く帰って仕事行こう、
そう思って急いでシャワーを浴びて、浴室を出た。




急ぐあまり、
彼が寝ていることを忘れて勢いよくドアを開けたら

思いの外大きな音が出てしまって焦る。




起こしちゃったかな…？とベッドの上の彼に視線を巡らせると、ゆっくり目を開けて、かすれた声で「あれ、、」と一言口に出した。




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