愛を知らない夏 ［Taiga］

あふれる ページ41

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襲ってくる眠気に任せて

そのまま、まぶたを閉じてしまうと、
顔に吐息がかかったと思ったら

まぶたにキスを落とされた。





「だからさ、髪切んないで」







どんな顔して言ってるんだろう。

閉じたまぶた、暗闇の中で
彼の顔を想像してみる。


きっと、
わたしが愛おしくてたまらないって顔してるんだろうなって、ただの願望。





息を止めているわけではないのに、なんだか苦しくなってきて、

水面から顔を出すみたいに、目を開いて



「えー、明日髪切りに行こうと思ってたのに」って
茶化して言えば

「え！だーめ！」と笑うから、わたしもつられて笑ってしまう。




「もう、ムード台無し！」

ぷんすか拗ねる大我がかわいくて、
頬がゆるむ。


膨らんだ彼のほっぺをツンツンすると、
そのまま手首を、頭上でまとめられて


「ベロ、出して」


と一言。




その一言で、魔法にかかったみたいに素直に従ってしまうわたしは、きっと心底彼に惚れている。



すぐキスが始まるのかと思っていたら
舌先だけで、弄び始めた。


ふたりの間にあるのは
舌先を繋ぐ、糸だけなのに、


それだけで、溢れて、溢れて。




甘い、キャンディみたいに、アイスみたいに

互いを分け合って。





どれだけ溶かされても、
まだまだ溢れてくるわたしの恋心。



でもそれ以上はお預けのまま。





キュッとゆるく掴まれていたわたしの手首を離したと思ったら、その手をわたしの耳に。



髪の毛に少し触れた、彼の指先にも反応してしまう。
とうとう、髪の毛一本一本まで性感帯になってしまったのか。



耳を塞がれたせいで
いやらしい音が脳を支配する。


だめだ、これは毒。



「きもちい？」



耳塞がれてたって、好きな人の声は
ちゃんと聞こえるんだもん。






ふたりが出会った初夏に、

唇を軽く噛まれて、毒を入れられたようなあの瞬間を思い出した。


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