愛を知らない夏 ［Taiga］

後輩 ページ18

.

「ええっ！？マジっすか？！」

「ちょっ、声大きいから！！」



"あ、すみません"と小声で話す樹くん。



この会社に入ってきたばっかりの頃とは
比べ物にならないくらい、頼りがいのある大人になった樹くん。




口元に細い指を当てて、
“ちょ、マジでびっくりしてます今”
と言いながらわたしの目の前に座った。


人の破局話にそんなに驚ける？普通、、




「え、だって、僕が入社したときには付き合ってたから、結構長いですよね？？」


「うん…まあ」



「だって僕、Aさんが指導係になったとき本気で“付き合いたい！”って思ったのに、彼氏いるって知って3日はごはん食べられなかったもん！」


「まーた嘘ばっかり」





「ほんとだってぇ〜！だって、マジで僕Aさんのこと狙ってましたよ」
「はいはい」




すると樹くんがパッと目を開いて、笑顔で言う。

「あ！！じゃあ！！てことはですよ？僕にもチャンスあるってことですか？」


「えっ、いや、…え？」

思わずごはんが喉に詰まって、
慌てて水を飲んだ。

しかも声が大きい。


「…てか樹くん彼女いるでしょ」
「いや、彼女"は"いないです」
「なにその彼女"は"って強調してるの」

「Aさんもわかるでしょ？」
って今度はいたずらっ子の顔。



そういう関係の相手がいる、っていうのは同じだけど
京本さんと樹くんは、タイプがかなり違うと思う。


人って見かけによらないな、と
ひとりで話し続ける樹くんをぼーっと眺める。


「Aさん僕の顔見つめてますけど、どうしました？もしかして…惚れ」
「てはないから」




.

デート→←月イチ

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す