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ヴィド「顔を__あげてよ」
しばらく室内に静寂が満ちた後、ヴィドがぽつりと言う。
ヴィド「知らないうちに、君はそんなに強くなったんだね…。その”大切な人”とやらの影響かな?」
図星を突かれ、顔が熱くなる感覚がした。私の様子を見てヴィドは乾いた笑いをしてから言葉を続ける。
ヴィド「…謝らないでよ。Aが本当にやりたいと思ってることならそれでいいんだ。実際、君の両親が亡くなった時だって何も出来なかったし。側にしてあげることすら、出来なかったから…。
無理矢理やらされてるって思ってたけど…俺の方が間違ってたかな、ごめん。
Aは昔の貴族の服を着て着飾っているよりも、今の方が断然綺麗だ。それはきっと…君が兵団に入ったおかげなんだろうから…。
昔は守られる存在っていう感じでか弱かくて可愛がったけど、___俺は今の方が好きだな。
まぁだからこそ、こんな無理を言うくらい気持ちが再熱しちゃったんだけど」
照れるような事をさらさらと言うヴィドに半ば置いていかれるような感覚になりつつ、彼は本当に心から私のことを想ってくれていたのだと、有り難みを感じると同時に胸が痛くなった。
ヴィド「最後に、これは俺の要望だけど__、
今度は調査兵団がどう、なんて狡い言い訳はしないから、ちゃんと言わせてくれ」
ヴィドは真っ直ぐに私を見つめて、呟く。
昔とは違って随分大人びた。単純な身体つきや背だけじゃない。でもその瞳の奥には昔の頃のような、純粋な彼が少しだけ宿っている気がした。
ヴィド「ずっと君が好きだった」
切な気に響いたその言葉に、
一呼吸置いて私も真正面から彼と向き合う。
「…ありがとう。でも、貴方の気持ちに答えることは出来ない。ごめんなさい」
そう答えると、ヴィドは「あぁ、」と笑った。子供の時のように無邪気で、今にも泣き出してしまいそうな笑顔だった。
ヴィド「…ありがとう。これでようやく昔の初恋にけじめがつけられた。…調査兵団の皆さんも、巻き込んで申し訳なかったな」
「ううん、嬉しかった」
ヴィド「…怪我何てしたら許さないからな。安全に…ってのは無理かもだけど、無事であることを祈っているよ。…応援してる。幼馴染みとして」
「…ありがとう、ヴィド。貴方も跡継ぎとして立派な君主になることを祈ってる」
ヴィド「あぁ、ありがとう。…調整日何かはこっちへ里帰りしておいでよ。…いつでも父さんと2人で待ってるから」
私達は顔を見合って、笑いあった。
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作者名:みみみみみ | 作成日時:2022年9月29日 19時