◆ ページ5
デノン「…何の騒ぎだ?」
私がこの文書を書いた犯人を探そうと辺りを見回していると、デノンさんは事の成り行きを見ているどころか、たった今食堂に入ってきた。
怪訝な顔をして、まだ髪には寝癖がついてる。完全な寝起きで、嘘はついていない様子だった。
じゃあこの文書を作ったのは…デノンさんじゃない。
背筋が凍える。じゃあ、誰がこれを…?
食堂の入り口で怪訝な顔でこちらを見ていたデノンさんは、私のとなりにある机の上に、1枚の紙が置かれていることに気がつき、近寄ってきた。
『お、おいやめろ、近づかない方がいいぞ』
紙を見ようとすれば当然、紙の近くに立ってる私に近づく事になる。それを青い顔をして周りにいた兵士が止めようとするが、デノンさんは構わずその文書を見て、僅かばかり目を見開いた。
「デノンさん…」
何を言ったらいいのか、どんな顔をしたらいいのか分からず、手が震える。
謝る?それとも、違うと嘘をつくべきなのか。
分からずにただ口をぱくぱくさせていると、デノンさんは溜め息を吐き、机の上にある紙_文書を手にとって、ビリビリに破いた。
「え…」
デノン「お前ら、本当にここに書かれてることが本当だって思ってんのかよ?このガキが?悪魔?
このチビで貧弱そうなガキの女が、かの有名な大量殺人鬼だと?」
皆唖然としてデノンさんを見ている。
デノン「そもそも、この文書には証拠が何も書かれていないじゃねぇか。それに、”地下街の悪魔”が憲兵に捕まったって知らないのかよ。
…お前ら、証拠もないのに人を疑って無駄な内戦を起こそうっていうのか」
デノンさんの言葉に、皆完全に納得した様子では無さそうだったが、肯定の言葉が所々から上がった。
『まぁ、内戦してる場合ではないな』
『そうだ、皆疲れてピリっちまってたな』
『早く飯食って身体休ませようぜ』
場の空気が、若干緩和され皆それぞれのやりたい事のために、机から、文書から離れていった。
…私の事を庇ってくれた。
私の事を”地下街の悪魔”じゃないと、そう思っているのだろうか。でも昨日のあの会話は、完全に私に鎌をかけてきていた。上手くかわせた自信もない。
…なら、どうして。
「デノンさん…」
デノン「…おい新兵、今は黙っとけ。場所を変える。団長室だ。…兵長もきっとそこにいる。来い」
デノンさんは私と目も合わせず、歩いていってしまう。私はその後を遅れないよう一生懸命追った。
164人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:みみみみみ | 作成日時:2022年9月29日 19時