再会 ページ39
ヴィド「こっちこっち、ここなら誰も来ない」
本当に城を抜け出した私達は、裏口から抜けて裏庭の方へと歩を進めていた。
「そう言えば昔こうして抜け出していたものね…。それでよく怒られてた」
ヴィド「あぁ…”しっかりなさい！”ってね」
私達は顔を見合わせてふっと笑う。
懐かしさと、安心感。ヴィドは元々優しい雰囲気を纏う人だったが、大人になって余計増した気がする。
ヴィド「大丈夫かい？ドレスだと大変だろう？」
さりげなく紳士に差し出された手。
私は申し訳なく思いながらも、顔を横に振った。
「…ごめんなさい。男性が、怖いの」
その言葉に、ヴィドはハッとしたような顔をして手を下ろした。
ヴィド「それはすまなかった。…それにしても、君が訓練兵に志願した何て知らなかったよ。最後の日くらい挨拶に来てほしかったと、ずっと思っていた」
「あ、…私、訓練兵出身じゃないの。とある事情で急に兵団に入ることになって…」
ヴィドの勘違いを馬鹿正直に正せば、事情を聞かれる事くらい分かっていた。が、どうしても古来の友人である彼に嘘をつくことは嫌だった。
ヴィド「…そうか」
しかし私の予想に反し、彼は聞いてこなかった。
「…聞かないの？」
思わずそう尋ねると、ヴィドは優しく微笑んだ。
ヴィド「言いたくないことのひとつやふたつ位出来る事くらい分かるさ。俺も大人になってるからね」
彼の相変わらずの優しさに、胸が痛む。
貴族から堕落し、私は”あんな生活”を送っていたというのに。彼を騙している気になって、自分が酷く汚く思えた。
ヴィド「…じゃあ、最初は調査兵団に入りたくはなかったってこと、だよね？」
「…え？えっと、入りたくなかったわけではないけれど、入るとは思ってなかったというか」
急に真剣な顔になったヴィドの視線の中には、何故だか熱が籠っていて。
ヴィド「じゃあ俺が君を救い出す！君はシーナにいるべき人間だ。君のためなら兵団にいくら払ったっていいさ」
そのあまりにも急な展開に、「え？」と思わず呆けた声が私の口から漏れてしまった。
「待ってヴィド。私は無理やりやらされているわけではなくて、やりたくて兵士をやってるの」
ヴィド「シーナに住んでいた頃の君でも、調査兵団に入る選択を取ったのか？」
その言葉に、心臓が嫌な音を立てる。
私が貴族だった時に、リヴァイさんに出会ったら＿
調査兵団に入ったのか。
私があの選択をしたのは、
あの地獄から抜け出したかっただけ＿？
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作者名：みみみみみ | 作成日時：2022年9月29日 19時
