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「…リヴァイさん」
リヴァイさんは私を見下ろして眉間に皺を寄せる。
リヴァイ「…どんな面してやがるんだお前は。
…胸を張れ。お前は兵団が誇る”兵士の女神”とかいう奴なんだろうが」
まさかリヴァイさんにその異名で呼ばれるとは思わず息が詰まる。が、自信を持てという不器用な励ましに、胸が熱くなった。
リヴァイ「…お前には、俺がついてるだろうが」
「…!」
彼の視線と目が合う。真っ直ぐに私を見る目。
…どうして、相変わらず私を落ち着かせるのが上手なんだろうか。
私はひとつ深呼吸をする。すると自然と背筋が伸びて目付きが変わったのが分かった。
「…ありがとうございます」
…不思議だ。立ち振舞いも何もかも、手に取るように簡単なことのように思えてくる。
『あら__美しい。調査兵団の方かしら』
『佇まいにオーラがあるのねぇ、素敵だわ』
エルヴィン「…しっかり板についてるな」
ハンジ「私達のAなら当然だろう?」
ようやく押し寄せる人から解放された2人も私達の元へ加わったその時、私を呼ぶ声がふと、聞こえる。それも、呼び捨てで。
その声に懐かしさを覚えて、振り向いて探すと_。
1人の男性が、立っていた。
長い金色の髪の毛を下の方で一本に束ねた、美しい顔立ちの高貴な青年。その姿に、私の記憶の泡が弾け跳んだ。
「…ヴィド…?」
ヴィド「覚えててくれたか!A!」
ぱぁっと笑顔になってこちらへ早歩きしてくる彼を見て、ハンジさんが耳打ちしてくる。
ハンジ「えっと、どなた?」
「…私の、幼馴染みです。ウィド・ミュラー。
…ミュラー家、ご存じないでしょうか?」
ハンジ「ミュラー家って、あの?超絶上流貴族の…」
私は苦笑いしながら頷く。まさに彼の家は権力者、世界が傾くくらいの財政を握っている家だった。
ヴィドのお父様、ミュラー伯爵はそんな権力者ながら私達レナルド一家にも優しくしてくれた。息子であるヴィドも私と同い年で、よく一緒に遊んだものだ。
ヴィド「まさかこんなところでまた会えるなんて」
ヴィドが微笑んで私にそう言った時、タイミングが良いのか悪いのか再びエルヴィンさん達が頭を下げた人々に囲まれてしまった。
『エルヴィン団長!』
『リヴァイ兵士長!』
『ハンジ分隊長!』
後ろ手に聞こえてくる声に顔を歪ませると、ヴィドはふっと笑った。
ヴィド「そういえば君は昔から、こういう場が得意な方ではなかったね。
___抜け出そうか、昔みたいに」
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作者名:みみみみみ | 作成日時:2022年9月29日 19時